診療支援
治療

翼状頸
Webbed neck
鬼頭 昭彦
(A*STAR Skin research labs research scientist)

病態

 乳頭様突起部あるいは耳介後部から肩峰に向かって皮膚が張り出した状態を表す症候名である.Turner症候群やNoonan症候群の一症状として現れることが多い.

【頻度】Turner症候群は出生女児2,000人に1人程度とされている.Noonan症候群は海外の報告では出生児1,000~2,500人に1人と報告されているが,日本国内での実態は不明である(600人程度と推定されている).

【病因・発症機序】先天性奇形の一症状.Turner症候群は,X染色体モノソミーが代表的であるが,X染色体の構造異常,モザイクなどの場合もある.Noonan症候群は多くは孤発例であるが,常染色体顕性(優性)遺伝形式の家系例も報告されている.約60%の患者でRAS/MAPKシグナル伝達経路を構成する分子(PTPN11など)の機能亢進変異が同定されるため,RAS/MAPKシグナル伝達経路の異常が原因と考えられている.

【臨床症状】耳介後部から肩峰に向かって,弛んだ皮膚が翼のように張り出した状態をいう.後部頭髪低位を伴う.


診断

【臨床症状からの診断】Turner症候群やNoonan症候群の特徴的な症状であるため,これらを疑うことが重要である.

1.Turner症候群

 低身長,性腺発育不全,外反肘などの奇形が主要症状である.卵巣機能不全による二次性徴や月経の異常をきたし,不妊となる場合が多い.そのほか,耳奇形,狭口蓋,楯状胸,心臓や腎臓の奇形などが認められることがある.知能は軽度に障害されることがある.

2.Noonan症候群

 Turner症候群と類似の症状を呈し,低身長,特徴的な顔貌(眼間開離など),胸郭変形,先天性心疾患,肥大型心筋症,思春期遅発,さまざまな程度の知的障害などが認められる.

【必要な検査とその所見】Turner症候群やNoonan症候群が疑われる場合は,染色体分析や遺伝子解析を行う.


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