日本皮膚科学会と日本熱傷学会(以下,日熱)の各々から,「熱傷診療ガイドライン」が策定されている.本文中の「推奨する」または「推奨しない」は,いずれかもしくは両学会のガイドラインに記載があるものである.
病態
【病因・発症機序】熱湯や火炎,爆発に伴う高温のガスなどはもちろん,湯たんぽやカイロ,保温便座などそれほど高温でないものでも,長時間の接触で熱傷となる.
【臨床症状】①熱傷深度は主に受傷した温度と接触時間により変化する.②表皮までの熱傷をⅠ度とし,疼痛を伴う紅斑で瘢痕を残さず治癒する.③真皮までの熱傷をⅡ度とし,さらに浅達性Ⅱ度(superficial dermal burn:SDB)と深達性Ⅱ度(deep dermal burn:DDB)に分けられる.SDBでは疼痛を伴い水疱や水疱底の真皮が紅色を呈す.1~2週間程度で上皮化し,一般に肥厚性瘢痕にはならない.DDBでは水疱もしくは水疱底の真皮が白色を呈し,SDBに比べ疼痛がやや鈍麻する.上皮化までに3~4週間を要し,肥厚性瘢痕や瘢痕ケロイドを残す可能性が大きい.④真皮全層以上の深さの熱傷をⅢ度(deep burn:DB)とし,乾燥した白色の皮膚あるいは褐色~炭化した黒色の皮膚となり,知覚は失われ針などで刺しても痛みを感じない.熱傷辺縁からしか上皮化せず,小範囲のもの以外では手術を要する.
【特に注意すべき臨床症状】①顔面熱傷で口腔内にすすがある,鼻毛が焼けている,嗄声や喘鳴があるなどの場合は気道熱傷を疑う.喉頭浮腫から呼吸困難・窒息の可能性があり,浮腫が進むと挿管困難となる.②胸郭の全周に及ぶⅢ度熱傷では,皮膚の伸展障害と受傷後の浮腫による呼吸運動抑制から換気障害を生じるため,減張切開が必要となる.③四肢の全周性熱傷も,末梢循環障害の予防のため減張切開を考慮する.
診断
【問診で聞くべきこと】①何でどのように受傷したか,どの程度の