診療支援
治療

刺青
Tattoo
塚本 克彦
(山梨県立中央病院院長補佐)

病態

 器具を用いて皮膚に色素を刺入し,恒常的な紋様,文字を形造ったもので,通常の装飾性刺青(decorative tattoo)のほかに,偶発的な外傷性刺青(traumatic tattoo),最近ではアートメイクとよばれる化粧刺青(cosmetic tattoo)が含まれる.

【刺青が関与する皮膚疾患】①刺青行為による反応:局所の炎症症状が生じ,約2週間で消褪する.時に局所の細菌感染として膿痂疹,蜂窩織炎などを生じる.特に素人による刺青行為の際に多い.また,使用器具の不十分な消毒によっては,B型肝炎,C型肝炎,HIVに感染するリスクがある.②刺青の色素に対するアレルギー反応:色素に含まれる金属(例えば,青:コバルト,緑:クロム,赤:水銀,黄:カドミウム,茶:マンガンなど)に対するアレルギーが生じると,刺青後2~3週あるいは数年経ってから,刺青の紋様の部分に突然,発赤腫脹と痒みを生じる.限局性の反応が多いが,時に汎発疹を生じることがある.③刺青により生じる疾患:刺青の部位に生じやすい皮膚疾患としては,扁平苔癬,乾癬,サルコイド肉芽腫,円板状エリテマトーデスなどが挙げられる.広範な刺青では,皮膚病変にとどまらず,びまん性肉芽腫性間質性肺炎,全身のリンパ節腫脹,全身性サルコイドーシスなどを生じる例がある.


診断

 装飾性刺青やアートメイクの診断は,問診での既往や臨床像から容易である.外傷性刺青については,本人も外傷の経緯を記憶していない場合も多く,青色母斑,色素性母斑などと鑑別が必要なことがある.その際は生検あるいは切除により病理診断を行う.

【病理所見】刺青の色素は,刺入直後は真皮中に遊離の状態でびまん性に存在する.1~2週間のうちに一部は遊離のまま,一部は単核球に貪食されて局所リンパ節へ移行する.残った色素粒子はマクロファージ,線維芽細胞に貪食されて凝集した状態となり血管周囲にとど

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