診療支援
治療

銀皮症,金皮症
Argyria,Chrysiasis
長野 徹
(神戸市立医療センター中央市民病院部長)

病態

 銀皮症は銀ないし銀化合物が皮膚・粘膜に沈着することによる慢性的な色素沈着症である.同様の病態は金においても起こり金皮症とよばれる.

【病因・発症機序】銀(金)もしくは銀(金)化合物が経口・経皮的に摂取され惹起される.銀皮症は局所性の場合があり歯科治療におけるアマルガム,銀細工や鍼灸の治療針により発症することがある.全身性銀皮症はかつて仁丹によるものの報告が散見されたが最近はまずみることはなく,銀イオン水など認可されていない健康食品の過剰摂取を契機に発症する例がある.局所性の金皮症は金摂取者のQスイッチレーザー照射部に生ずることが以前報告されたが最近の報告はない.全身性の金皮症は抗リウマチ薬として使用されてきた金チオリンゴ酸Na(シオゾール)やオーラノフィンによるものがあるが生物学的製剤などの登場により使用例をみることはなく,全身性金皮症を経験することは少ない.

【臨床症状】局所性銀皮症は銀細工師の手指の青黒色斑・アマルガム接触部位の口腔粘膜の青黒色斑・鍼灸の銀治療針による場合は背部に多発する青灰色斑として生ずる.一方全身性銀皮症の場合は顔面手背など露光部を中心にびまん性の青灰色,スレート色を呈する.全身性金皮症の場合も銀皮症とほぼ同様の症状を生ずる.自覚症状は両者ともないのが普通である.

【必要な検査】病理組織学的には銀皮症,金皮症とも汗腺など付属器周囲,血管周囲を中心に黒褐色の微細なparticleを認める.顆粒沈着部のX線微量分析で銀,金のピークを認めると確定診断となる.


治療

 限局性銀皮症の場合可能であれば切除は有効な方法である.全身性銀(金)皮症には有効な治療はないが継続的な摂取の中止とともに,露光部に生ずることが多いことから遮光の励行は必須である.

□患者説明のポイント いったん発症すれば銀・金の摂取を中止しても色素沈着そのものは消褪しない.退色は困難であるが遮光は必

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