病態
結節性硬化症は,皮膚,脳,心臓,腎臓などの多様な臓器に形成異常と過誤腫発生をきたす常染色体優性遺伝の全身性疾患である.遺伝病だが,60%以上は孤発例である.古典的には知能低下,てんかん,顔面の血管線維腫が3主徴であったが,症状の広がりや程度の個人差は非常に大きく,それらがそろわない症例も珍しくない.
【頻度】海外では,6,000人に1人とされており,本邦でも同程度と推測されている.
【病因・発症機序】2種の癌抑制遺伝子TSC1(染色体9q34),TSC2(染色体16p13.3)が原因遺伝子として特定されている.それぞれの遺伝子産物であるhamartinとtuberinが複合体を形成し,mTOR(mammalian target of rapamycin)を抑制し,細胞増殖を制御しているが,そこに異常をきたし,過誤腫が形成される.
診断
【臨床症状からの診断】世界的に診断基準が定められている.原因遺伝子は特定されているが,解析が困難であり,さらにそれらの遺伝子に変異が見つからない症例もあり,臨床症状による診断基準が重要である(表21-3)図.診断の契機となりやすい症状は,出生前超音波検査で指摘されうる心横紋筋腫や幼小児期から出現する発達異常,てんかんなどであるが,白斑や顔面血管線維腫などの皮膚症状から診断につながる症例も少なくない.特に心横紋筋腫,知能低下やてんかんがない症例では,その他の臓器病変は無症状で気づかれないことがあり,皮膚病変を契機に診断される成人例もあることを知っておく必要がある.後述の皮膚症状から結節性硬化症が疑われる場合には,小児科,腎泌尿器科,脳神経外科,呼吸器内科など複数の科と連携し,全身精査を行うほうがよい.
【皮膚症状】皮膚症状は,結節性硬化症患者の約96%の症例にみられる.まずは,白斑が出生時あるいは出生後数年以内に出現してくる.葉状白斑とよばれる不整
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