病態
母斑様基底細胞癌症候群(NBCCS)は,基底細胞母斑症候群やGorlin症候群ともよばれる.常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性疾患であり,種々の腫瘍性病変と先天奇形を特徴とする.浸透率は100%といわれている.
【頻度】有病率は,米英国では6万人弱に1人であるのに対し,本邦では23万5,800人に1人と報告されているが,少なく見積もられている可能性がある.孤発例が60%を占める.
【病因・発症機序】主な原因遺伝子はPTCH1遺伝子であり,NBCCSでは生殖細胞系の対立遺伝子の一方に不活性化変異がみられる.PTCH1はヘッジホッグの受容体で,細胞膜上でsmoothened(SMO)に結合しSMOの機能を抑制することにより,ヘッジホッグシグナル伝達経路を抑制している.PTCH1に機能異常があると,ヘッジホッグシグナル伝達経路が活性化される.腫瘍性病変は体細胞において正常の対立遺伝子が欠失しPTCH1の機能消失により,先天奇形はPTCH1の量的異常により生じると考えられる.PTCH1遺伝子以外に,PTCH2遺伝子やSMOの下流のSUFU遺伝子に変異がある症例も少数報告されている.
【臨床症状】
1.皮膚病変
若年より基底細胞癌(BCC:basal cell carcinoma)が多発するのが特徴的である.一般のBCCと同様に顔面などの露光部に生じやすいが,体幹など非露光部にも生じるので,全身の皮膚をくまなく観察する必要がある.掌蹠の小陥凹も特徴的である.
2.皮膚外病変
①腫瘍性病変:多発する顎骨の囊胞が特徴的で,角化囊胞性歯原性腫瘍と称される.高率に発症し,初発症状として歯科でのパノラマX線画像で発見されることが多い.また,髄芽腫,卵巣線維腫,心線維腫などがみられる.髄芽腫は,平均約2歳時と早期に発症するため注意が必要である.②先天奇形:前頭や頭頂部の突出,両眼隔離や広い鼻根部により,
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