診療支援
治療

神経皮膚黒色症
Mélanose neurocutanée,Neurocutaneous melanosis
大塚 藤男
(筑波大学名誉教授)

病態

 神経堤起源性の色素細胞が皮膚および中枢神経系に増殖するまれな母斑症の1型である.皮膚では広範囲に色素性母斑を,また中枢神経系では同細胞の増殖による脳圧亢進,巣症状などを生じる.増殖する色素細胞にNRAS遺伝子変異が検出されて体細胞モザイクにより本症が生じると考えられている.

【臨床症状】皮膚病変は出生時,あるいは生後1年以内に発生することが多い.背部から臀部に好発する巨大な有毛性色素性母斑〔獣皮様母斑(giant melanocytic nevus,giant hairly nevus)〕とともにさまざまな大きさの色素性母斑が全身に多発する.巨大色素性母斑から悪性黒色腫を生じうる.中枢神経系(脳軟膜,時に脳実質)にも色素細胞が増殖する.中枢神経症状が顕在化しないことも多いが,顕在化すると脳圧亢進症状,巣症状やけいれん発作,精神発達遅滞などさまざまな症状を呈しうる.中枢神経系病変も頻度は不明であるが悪性化する.


診断

 画像診断技術(特にMRI)の進歩により脳軟膜の肥厚や中枢神経系における色素細胞増殖を非観血的に診断できるようになっている.診断に対応した諸検査をさらに進めて病像把握に努める.皮膚病変はその特徴的病変により診断は容易であるが,急速に増殖する病変,隆起性病変など悪性化の徴候がないかを確認する必要がある.


治療

 皮膚の巨大色素性母斑は悪性化予防と整容的見地からしばしば外科的に切除し,植皮などで再建する.悪性化病変は悪性黒色腫の各種治療に準じて治療する.中枢神経病変の治療は通常対症療法で対応する.脳圧亢進には水頭症に準じてシャント形成術などで対応する.近年,免疫チェックポイント阻害薬などが試用されている.

【予後と経過】過去には多くの患者が乳幼児期に死亡し,きわめて予後不良の疾患といわれた.現在でも中枢神経系の色素細胞増殖性病変の完治は期待できない.しかし,近年,画像診断

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?