診療支援
治療

汎発性黒子症(LEOPARD症候群)
LEOPARD syndrome
茂木 精一郎
(群馬大学教授)

病態

 全身皮膚に汎発する黒子に加え,心血管系,骨格,耳,眼,泌尿生殖器,精神神経系など各種臓器に先天異常を合併する.主要症候の頭文字をとって命名された〔L:multiple lentigines(多発性黒子),E:electrocardiographic conduction abnormality(心電図異常),O:ocular hypertelorism(両眼隔離),P:pulmonary stenosis(肺動脈狭窄),A:abnormality of genitalia(生殖器異常),R:retardation of growth(発達障害),D:sensorineural deafness(感音性難聴)〕.

【病因・発症機序】本症は常染色体優性遺伝である.原因遺伝子として,PTPN11(SHP2)遺伝子の変異が同定されている.本症患者の65%はY279CかT468Mの変異を有する.色素細胞におけるPTPN11(SHP2)遺伝子の変異によって生じるAkt/mTORシグナルの活性化が多発性黒子の病態に関与する.


診断

 診断基準を表21-5に示す.汎発性黒子に加えて2項目以上を認める場合に本症と診断する.黒子を認めない場合は,3項目以上がみられ,かつ近親者に本症患者がみられる場合に診断する.多発性黒子は乳幼児期に出現し始め,その後,全身に拡大,増数する.上半身に密に分布する傾向がある.黒子は粘膜部にはみられないため,Peutz-Jeghers症候群と鑑別できる.悪性黒色腫を発症した症例が数例報告されており,定期的な観察が必要である.黒子以外にカフェオレ斑がみられる.脱色素斑,水かき形成,爪甲形成異常,皮膚過伸展もみられることがある.頭蓋顔面の異常では,両眼隔開離,高位口蓋,歯牙異常,下顎前突などがみられる.難聴は感音性難聴であり,幼少時に発症する.

【必要な検査とその所見】

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