病態
1.粉瘤(類表皮囊腫)
全身どこにでも生じうる皮内~皮下腫瘍で,上皮性良性腫瘍のなかで最も多いとされる.直径数cm程度のなだらかに隆起する病変で,正常皮膚色~淡青色を呈し,弾性硬の硬さで中央には黒点状の開口部を有することが多い.表皮との可動性はなく,下床とは可動性を有する(図22-5)図.通常,自発痛や圧痛はないが,囊腫壁の破綻を起こすと,周囲の発赤・腫脹とともに疼痛を生じる(炎症性類表皮囊腫).
2.稗粒腫
径1~2mm程度の白色小丘疹で,組織学的には類表皮囊腫と同様,表皮直下の角質囊腫である.女性の顔面に好発する原発性(図22-6)図と水疱症や外傷などの創傷治癒後に生じる続発性の2種に分けられる.
3.皮様囊腫
出生時から存在し,直径数cm程度の皮下結節として頭部や顔面に好発する.臨床所見は類表皮囊腫に似るが,より深在性であるため表皮との連続性はなく可動性を有する.皮下に生じるものは皮下皮様囊腫ともよばれ,後腹膜や卵巣に好発し,毛髪,骨,歯などが含まれる奇形腫としての皮様囊腫とは異なる.
【病因・発症機序】
1.粉瘤(類表皮囊腫)
何らかのきっかけで表皮や毛包漏斗部の上皮が真皮内に陥入し,囊腫構造を形成することで発症する.囊腫壁から脱落した角質が徐々に堆積することにより緩徐に増大する.
2.稗粒腫
続発性のものは水疱性類天疱瘡,熱傷,外傷後などの上皮化の過程で生じる.
3.皮様囊腫
胎生期の皮膚の迷入によって生じる.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】①外毛根鞘囊腫:臨床所見は類表皮囊腫とほぼ同等で,約9割が頭皮に生じる.②脂腺囊腫:頸部,前胸部,腋窩,上肢に好発し,多発傾向があり,淡黄色を呈することが多い.③脂肪腫:皮膚との連続性がなく,囊腫ではないが,視診・触診では類表皮囊腫と鑑別困難な場合もある.画像検査により容易に鑑別可能である.④癤:感染症であるが,炎症性類表皮囊腫との鑑
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