病態
古典的分類法による皮膚付属器腫瘍の分類は,folliculo-sebaceous-apocrine unitとよばれる発生学的な名称に基づき,毛包,脂腺,アポクリン腺を1つの単位として取り扱い,エクリン系と2つに大別する方法がとられている.さらに,最も分化した成分に基づき,エクリン系腫瘍,アポクリン系腫瘍,毛包系腫瘍,脂腺系腫瘍の4つに分類する方法も幅広く用いられている.一方,WHO分類では汗管系腫瘍をエクリン系とアポクリン系に分けず,毛包系腫瘍,脂腺系腫瘍の3系統に分類している点が大きく異なる.その理由は,厳密にエクリン系とアポクリン系を鑑別できない症例が多いためとされる.いずれの分類においても,病理組織学的に複数の成分が混在し(mixed features),きっちりと系統を分類することができないcomplex adnexal tumorsとよばれる症例も存在し,その際には優勢像に基づいて分類されることも多い.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】汗管系腫瘍(エクリン系,アポクリン系),毛包系腫瘍,脂腺系腫瘍はそれぞれが互いに臨床的鑑別疾患になる.また,比較的浅い病変では上皮系腫瘍も鑑別となり,深在性の病変では間葉系腫瘍が鑑別になることもある.悪性上皮性腫瘍や悪性皮膚付属器腫瘍との鑑別も重要である.
【代表的疾患とその特徴】
1.汗管系腫瘍
①汗囊腫(hidrocystoma):中年女性の顔面に好発し,単発ないし多発する直径1cm程度の結節である(図22-10)図.夏に生じやすく,多汗症で発生率が高いことが知られる.エクリン系もアポクリン系も存在する.病理組織学的にはエクリン汗囊腫は単房性の囊腫構造を呈し,アポクリン管囊腫は多房性の囊腫であることが多く,壁に断頭分泌を認める.②汗管腫(syringoma):若年から中年の女性の顔面に好発し,直径数mm程度の多発性の丘疹として出