病態
外陰部に好発するアポクリン腺様分化を示す異型細胞が表皮内より増殖する疾患で,アポクリン汗腺の豊富な外陰部,肛門周囲に好発する.病理組織学的には胞体の明るい異型細胞(Paget細胞)が胞巣を形成して表皮内に増殖し,進行すると真皮内へと浸潤し,リンパ行性・血行性転移を生じるようになる.
【頻度】欧米よりアジア圏での頻度のほうが高い.人口10万人あたりの年間発生数0.28人とされている.
【臨床症状】外陰部に脱色素斑,色素斑などを含む紅斑局面として認識され,病変内にはしばしばびらんが混在する(図22-28)図.紅色結節・腫瘤が病変内にみられる場合は,真皮浸潤の可能性を示唆する所見である.病変の境界が不明瞭であることもあり,特に男性の陰囊部,女性例での腟,外尿道口付近の粘膜側病変の境界ははっきり認識できないことが多い.
【特に注意すべき臨床症状】外陰部以外にもアポクリン汗腺の豊富な腋窩,臍周囲に生じることがある.領域リンパ節腫大があるときはリンパ節転移を疑う.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】白癬,湿疹,脂漏性皮膚炎,乾癬,硬化性萎縮性苔癬,Bowen病などが挙げられる.
【問診で聞くべきこと】①病変に対する過去の処方歴を確認する.白癬や湿疹,脂漏性皮膚炎などを疑われ外用薬を処方されたが改善傾向がない場合,本症を疑う根拠となる.②直腸癌や膀胱癌などの既往を確認する.既往があり,かつ尿道・腟・肛門周囲での発生例はPaget現象(直腸癌などの皮膚側への水平進展)の可能性も念頭におく必要がある.
【必要な検査とその所見】
1.病理組織学的検査
確定診断のため,病変部を生検する.胞体の明るい異型なPaget細胞が胞巣を形成して増殖する.進行すると真皮内に浸潤する.病変の境界不明瞭な場合はマッピング生検も考慮する.
2.画像検査
特に原発巣の真皮浸潤や鼠径リンパ節転移が臨床所見や生検で明らかな場合は,