診療支援
治療

神経腫
Neuroma
出月 健夫
(NTT東日本関東病院主任医長)

 神経腫として皮膚科で扱う疾患は,①外傷性神経腫,②痕跡的多指症,③柵状被包化神経腫の3疾患で,①,②はいずれも外傷後の反応性過形成と考えられている.病理組織学的には,Schwann細胞と軸索がほぼ1:1の構成をとる.


Ⅰ 外傷性神経腫 (traumatic neuroma)

病態

【頻度】四肢切断後に生じることが多く,皮膚科領域ではまれである.

【病因・発症機序】外傷や手術後に,皮下に生じる有痛性の結節.末梢神経の断端で,神経幹内のSchwann細胞と結合組織が増殖することによって生じる.


診断

【臨床症状からの診断】外傷あるいは四肢切断後に,圧痛や知覚過敏を伴う皮下結節を生じた際に疑う.発症までは1か月~20年と幅がある.皮膚科領域では植皮術後に生じた報告がある.

【病理組織学的診断】瘢痕組織内に,大小の神経線維束が不規則に増生する.神経線維束は正常の末梢神経と同じ構造をとる.


Ⅱ 痕跡的多指症 (rudimentary polydactyly)

病態

 Hareが1954年に記載した,臨床所見に基づく疾患概念.

【頻度】本邦報告例は30例程度と少ない.

【病因・発症機序】病理組織学的に外傷性神経腫と同様で,子宮内で浮遊状の余剰指が自然切断されて生じたとする考えがある.


診断

【臨床症状からの診断】手指に生じる,出生時からのアズキ~ダイズ大の常色結節(図23-3).本邦では母指側に多く,時に小指側などにも認める.

【病理組織学的診断】真皮内に多数の神経線維束を認める(図23-4)


Ⅲ 柵状被包化神経腫 (palisaded encapsulated neuroma)

病態

 Reedが1972年に記載した,30~60歳代の顔面に好発するまれな良性腫瘍.

【病因・発症機序】神経線維の1次性増殖であり,minor traumaが病因であるとする考えがある.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】母斑細胞母斑や毛母

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?