診療支援
治療

房状血管腫
Tufted angioma
神人 正寿
(和歌山県立医科大学教授)

病態

 まれな良性の血管腫に分類される.病理組織学的な特徴である「circumscribed groups of tufts of hypertrophied endothelial cells」に由来してtufted angiomaと名付けられた.ほかにもangioblastoma of Nakagawaなど,さまざまな呼称が存在する.

【病因・発症機序】不明だが,GNA14遺伝子の関与が指摘されている.

【臨床症状】出生時から存在することが多いが,成人発症することもある.圧痛,多汗や多毛を認めることもある.加えて,Kasabach-Merritt現象を合併する場合や血小板減少はみられないが遷延する凝固障害をきたす場合があり,注意を要する.


診断

 特徴的な臨床像に加え,病理組織学的に真皮全層から皮下脂肪にかけての毛細血管の房状増殖が砲弾が散らばるように島嶼状にみられ,「cannonball」と表現される.腫瘍細胞は紡錘形あるいは円形の小型の血管内皮細胞からなる.

【鑑別診断で想起すべき疾患】乳児血管腫とKaposi肉腫様血管内皮細胞腫との鑑別が必要となる.すべてCD31陽性の血管内皮細胞の増殖による病変であるが,乳児血管腫は通常出生時には目立たずその後急速に増大する経過や,腫瘍細胞がGLUT-1陽性になる点が異なる.また,Kaposi肉腫様血管内皮細胞腫では胞巣辺縁部でD2-40染色が陽性になる.


治療

 経過観察されることも多いが,整容面・症状面で必要な場合は切除あるいは放射線療法,色素レーザー療法が行われることがある.また,エビデンスには乏しいがステロイド外用やトラニラスト内服が使用されることがある.

【予後と経過】乳幼児発症の場合,自然消褪が約10%にみられる.一方,一度消褪・治療したあとにしばしば再発することもある.

□患者説明のポイント 診断には皮膚生検が必要であること,血液異常

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