病態
皮膚の間葉系の増殖性疾患.皮膚良性線維組織球腫(cutaneous benign fibrous histiocytoma)ともよばれる.染色体異常が検出されることから,腫瘍性病変とされる一方で,外傷が契機になりうることから,反応性病変とする報告もある.発生に免疫抑制や妊娠の関与が指摘されている.
診断
若年成人の四肢,体幹に生じる傾向がある.比較的女性に多い.
直径1cmまでの単発あるいは多発する硬い結節を呈する(図24-9)図.2cmほどになることもある.典型的には褐色だが,ピンク,赤,黒褐色も呈しうる.多くの例で無症状だが,まれに瘙痒を生じる.典型例は長年変化しないが,増大する例や,逆に退縮する例もある.
ダーモスコピーではfine pigment networkが特徴的であるが感度は低い.
病理組織学的に,表皮突起の延長と基底層の色素沈着が目立つ.多くの例で腫瘍と表皮の間に間隙(Grenz zone)がみられる(図24-10)図.病変は線維芽細胞様の紡錘形細胞,組織球,血管,間質から構成される.個々の細胞が膨化した膠原線維間に浸潤し,境界は不明瞭である.核分裂像はみられても異型はない.典型例ではfactor ⅩⅢa陽性,CD34陰性を呈する.これらは隆起性皮膚線維肉腫との鑑別において有用である.
以下①~⑤のようなさまざまなバリアントが存在する.①cellular fibrous histiocytoma:密な細胞成分からなる束状,花筵状の増殖がみられる.②aneurysmal fibrous histiocytoma:血液を満たした空隙が特徴的である.③atypical fibrous histiocytoma:大型,多型性の異型細胞が存在する.④epithelioid fibrous histiocytoma:豊富な好酸性の細胞質を有する細胞から構成される.