病態
皮膚に親和性の高いT細胞が腫瘍性に増殖している状態である.菌状息肉症では紅斑や浸潤局面,腫瘤などを呈し,Sézary症候群では紅皮症を呈する.Sézary症候群では末梢血中で皮膚と同じクローンが増えており,リンパ節腫脹を伴うことが多い.
【頻度】本邦における菌状息肉症の新規発症例は年間200~300例と考えられる.Sézary症候群の年間新規発症は20例以下である.
【病因・発症機序】臨床,病理が類似している成人T細胞白血病・リンパ腫ではウイルスの関与が知られていることから,以前よりウイルス説があるが,今のところ否定されている.家族性の報告もほぼなく,多因子が発症に寄与していると考えられている.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】紅斑や褐色斑がメインの状態では尋常性乾癬,慢性湿疹,アトピー性皮膚炎,浸潤局面の場合はサルコイドーシスや環状肉芽腫,紅皮症の患者ではアトピー性皮膚炎,薬疹,老人性紅皮症などが鑑別となる.
1.問診で聞くべきこと
発疹の出現時期や経過,ステロイド外用薬の効果,アトピー素因の有無などを聞く.成人T細胞白血病・リンパ腫も鑑別となるため,本人,親の出身地を尋ねる.治療方法の選択には合併症の有無も重要なため,既往歴,処方歴も確認する.
2.臨床症状からの診断
菌状息肉症の場合,体幹,臀部,下肢などの非露光部を中心に,境界明療な落屑性紅斑~褐色斑(図25-2)図を生じる.左右非対称であることが多い.多形皮膚萎縮は比較的特徴的な所見である.進行してくると浸潤を伴ってくるが,その時点では診断が比較的容易である.腫瘤期の病変(図25-3)図はほかのリンパ腫や扁平上皮癌,悪性腫瘍の皮膚転移なども鑑別となるが,併存する紅斑,浸潤局面や長期にわたる病歴から診断に迷うことは少ない.腫瘍細胞が毛包に親和性をもつ場合,頭部や顔面などに発疹が出るため,診断に苦慮することがある.Séza
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