診療支援
治療

伝染性軟属腫
Molluscum contagiosum
江川 形平
(京都大学講師)

病態

 伝染性軟属腫ウイルス(molluscum contagiosum virus)の感染によって生じる皮膚の良性腫瘍.いわゆる“みずいぼ”.接触で伝染する.

【頻度】1歳までに生じることはまれであるが,他人と接する機会が増えるとともに増加し,5~8歳頃に最も多い.夏季に多く,プールでの感染の機会も多いと考えられている.成長し皮膚のバリア機能,免疫能が完成すると自然と感染しなくなり,脱落する.成人に生じることは通常まれである.

【臨床症状】直径1~5mm(まれに1cmを超える),ドーム型,常色からピンク色の丘疹で,中央に臍窩をもちしばしば多発する(図26-1).圧迫するとチーズ様の白色内容物が圧出される.通常自覚症状はないが,周囲に湿疹を合併し瘙痒を呈することがある.

【特に注意すべき臨床症状】成人でも皮膚のバリア機能,あるいは免疫能に異常がある場合には感染することがある.アトピー性皮膚炎やAIDSの患者がこれにあたる.成人での多発をみた場合には,これらの基礎疾患の有無について考慮する必要がある.


診断

 通常,その特徴的な形態から診断は容易である.ウイルスは正常な角質が存在する部分からは皮膚の生きている細胞に感染できないため,微小外傷や毛包などの皮膚付属器から感染する.丘疹の中央に臍窩をみた場合は,皮膚付属器からの感染であることを示唆する.鑷子などで試験的に圧迫し,白色内容物の圧出をみて確定診断をつける.

【鑑別診断で想起すべき疾患】ケラトアカントーマ,エクリン汗孔腫,稗粒腫,尋常性疣贅,扁平疣贅.


治療

 自然治癒する疾患であるため,経過観察するという選択肢も考慮される.一方,アトピー性皮膚炎などのバリア機能異常がある患児への感染(自家感染も含む)リスクを考慮し,みつけたら適宜摘除するとの考え方もある.摘除する場合,鑷子で腫瘍を両側から押しつぶすように挟み,内容物を圧排する.摘除の1

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