病態
主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる急性感染症.口や手,足,臀部,陰部などに水疱を伴う小紅斑が多発する(図26-2)図.
【頻度】患者の9割は5歳以下であるが,成人にも生じることがある.夏季に多い.
【臨床症状】潜伏期は3~5日.発症初期に口唇や口腔内粘膜に紅斑,水疱,びらんを呈し,その後手,足,臀部,陰部などへと皮疹が拡大する.約3割に38℃台の発熱や咽頭痛をみる.
【病因・発症機序】原因となるウイルスはコクサッキーウイルスA16(CA16),エンテロウイルス71(EV71)が代表的であるが,CA4,5,6,10,14などによる流行もある.
【特に注意すべき臨床症状】EV71は中枢神経症状(急性脳症や髄膜炎など)の合併が多い.近年流行がみられるCA6による手足口病では,通常のものと発疹の出現部位が異なること,水疱が大きく扁平で臍窩を認めること,爪脱落を生じうることなどが報告されている.
診断
通常は特徴的な臨床症状から診断する.補助的にペア血清で4倍以上のウイルス抗体価上昇を確認することもある.ウイルスの直接検出は,咽頭や肛門部のスワブ,水疱内容液などを採取し,PCR法で行う.
【鑑別診断で想起すべき疾患】水痘,ヘルペスウイルス感染症,Stevens-Johnson症候群.
治療
特異的な治療法はなく,対症療法が中心となる.脱水を生じないように,水分の摂取を励行する.すっぱいものや辛いものの摂取を避けるよう指導する.
Px処方例 症状に応じて下記のいずれかを用いる.
(発熱時や疼痛が強い場合)
1)アセトアミノフェン薬末 1回10~15mg/kg(成分量として) 1日2~3回
(痒みが強い場合)
2)レスタミン薬コーワクリーム 1日2回 塗布
【予後と経過】発熱は3~5日で,皮膚粘膜疹は7~10日で自然治癒する.症状改善後も数週間は便中にウイルスの排出があるため,注意を要する.
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