診療支援
治療

伝染性膿痂疹
Impetigo contagiosa
玉城 善史郎
(埼玉県立小児医療センター科長兼副部長)

病態

 伝染性膿痂疹(とびひ)は浅在性皮膚感染症の代表的疾患で,臨床的に水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹に大別される.

1.水疱性膿痂疹(図27-1)

 黄色ブドウ球菌の皮膚局所の感染・伝播により引き起こされる疾患で,乳幼児から学童期に好発し,夏季に多いのが特徴であり,全身症状はないかごく軽度である.鼻孔部を触ることや虫刺,小外傷,アトピー性皮膚炎の搔破部位から始まり,搔破による水疱内容の播種により急速に弛緩性水疱が全身に拡大する.菌の産生する表皮剝脱酵素によるデスモグレイン1の傷害が原因とされている.近年では,市中獲得型のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)による膿痂疹が増加していることにも注意が必要である.

2.痂皮性膿痂疹

 A群β溶血性レンサ球菌を中心としたレンサ球菌群より発症するが,多くの場合は黄色ブドウ球菌との混合感染である.年齢や季節を問わずみられ,咽頭痛や有痛性リンパ節腫脹,発熱などの全身症状を伴うことが特徴.顔面や手足などを中心に紅斑や丘疹が出現し,すぐに小膿疱,びらん,厚い痂皮と変化していき,周囲に強く発赤を伴う.検査にてCRP上昇や白血球増多がみられる.また合併症として感染1~2週間後より,浮腫や高血圧,発熱,血尿などを呈する糸球体腎炎を発症する場合があることにも注意する.


診断

 水疱性膿痂疹では季節(夏季),年齢(乳幼児期)によりみられる全身症状を伴わない急速に拡大する水疱・びらんの出現より疑い,細菌培養による黄色ブドウ球菌検出にて診断する.

 痂皮性膿痂疹は全身症状を伴う痂皮性の皮疹が急速に拡大した場合に疑い,細菌培養にてレンサ球菌群(黄色ブドウ球菌の混合も含む)の検出にて診断する.

【鑑別診断で想起すべき疾患】ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群,Kaposi水痘様発疹症.


治療

 水疱性膿痂疹の軽症の場合は創部の抗菌薬外用とガーゼ保護のみでよいが,基本的には抗菌薬内

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