診療支援
治療

猩紅熱,その他の溶連菌感染症
Scarlet fever and Streptococcal infections
日野 治子
(関東中央病院特別顧問)

病態

 溶血性レンサ球菌(レンサ球菌)は,グラム陽性,一部のD群以外はカタラーゼ陰性球菌である.グラム陽性レンサ球菌はLancefield分類でA~V群(I,Jは除く)に分けられ,さらにヒツジ赤血球溶血状態で部分溶血のα,完全溶血のβ,溶血のないγに分ける.病原性を呈するレンサ球菌はβ溶連菌のA群(Streptococcus pyogenes),B群(S. agalactiae),C・G群(S. dysgalactiae subsp. equisimilis)およびD群である.

 溶連菌の1次的感染症としては,化膿性皮膚疾患(膿痂疹,丹毒,蜂窩織炎,膿瘍,壊死性筋膜炎,湿疹などの先行病変への2次感染),敗血症,咽頭炎,扁桃炎などである.ほかにも化膿性関節炎,骨髄炎,中耳炎,髄膜炎などの起因菌になりうる.

 A群β溶連菌は発赤毒(erythrogenic toxin, Dick toxin),ストレプトリジン,ストレプトキナーゼ,ヒアルロニダーゼ,DNAaseなどを産生するが,猩紅熱は発赤毒による.また,2次的な疾患,すなわち菌に対するアレルギーと考えられている疾患では,急性糸球体腎炎,リウマチ熱,リウマチ性心臓病,アレルギー性紫斑病などがある.

【頻度】A群β溶連菌は,保菌していても発症しない個体が多く,健康保菌者は15~30%にも及ぶとされている.急性咽頭炎患者からの感染発症が多く,保菌者からの発症はほとんどないといわれている.患者は学童期に好発し,接触感染で広がっていく.家庭内,学校などで集団感染もある.サーベイランスでは,猩紅熱は秋~冬,さらに初夏にまで多く発症するが,盛夏にはむしろ少ないようである.

【臨床症状】

1.猩紅熱

 潜伏期は4~5日で,咽喉頭・扁桃炎が先行したり,合併することが多い.まれにS. pyogenesによる膿痂疹・蜂窩織炎などの皮膚感染症に続発することも

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