病態
【疾患概念】①臨床の現場において,「蜂窩織炎」という言葉の使用についてはしばしば混乱がみられる.広義には皮膚から皮下脂肪層にかけての炎症を総称して「蜂窩織炎」とすることもあるが,狭義では真皮深層から皮下脂肪層を病変の主座とし,主に黄色ブドウ球菌を起炎菌とする細菌感染症が,病名としての蜂窩織炎である.②骨髄炎など深部の感染症に続発するものや,真菌症・抗酸菌感染症,あるいは自己免疫疾患などによる炎症は,通常病名としての蜂窩織炎の疾患概念には含まれない.また,丹毒や壊死性筋膜炎は,蜂窩織炎と同じスペクトラム上の皮膚・軟部組織を主座とする感染症ではあるが,通常は異なる疾患として扱う(丹毒と壊死性筋膜炎については→,→を参照).
【臨床症状】①下肢に好発し,通常片側性である(図27-8)図.1~数日で,局所に発赤,腫脹,熱感,疼痛が出現し,しばしば膿瘍を形成する.②発熱などの全身症状を伴うこともあり,重症化すると劇症型の軟部組織感染症や敗血症へ進展する.
【病因・発症機序】足白癬や皮膚炎などによる軽微な外傷がきっかけとなり,皮膚常在菌が経皮的に侵入し発症するといわれている.ただし,明らかな外傷や皮膚病変を伴わない場合も多い.肥満症や糖尿病,免疫不全などの基礎疾患を背景に生じることもある.
診断
【鑑別疾患で想起すべき疾患】深在性皮膚真菌症や皮膚抗酸菌症,骨髄炎や腸腰筋膿瘍などの深部の感染症,膠原病,血管炎などによる炎症,虫刺症,皮膚リンパ腫,壊死性筋膜炎など,鑑別疾患は多岐にわたる.
【検査所見と確定診断】典型的な臨床症状に加え,血液検査上,CRPの上昇や白血球数の増多,白血球分画中の好中球優位の増多などがみられれば診断は比較的容易である.しかし,蜂窩織炎の確定診断の際に最も重要なことは,上記のようなさまざまな鑑別疾患の確実な除外である.非典型的な部分が少しでもあれば鑑別疾患を念頭においた
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