診療支援
治療

丹毒
Erysipelas
飯野 志郎
(福井大学講師)

病態

【疾患概念】真皮浅層を病変の主座とし,A群β溶連菌を主な起炎菌とする細菌感染症である.蜂窩織炎とは同一スペクトラム上の疾患である.

【臨床症状】1~数日で発熱と皮疹が出現する.皮疹は主に顔面に片側性に出現し,独特の蝋様光沢を伴う境界明瞭な紅斑,腫脹,熱感,疼痛が特徴である(図27-9).進行するとびまん性に水平拡大する.時に水疱形成を伴う(水疱性丹毒).全身症状として38℃以上の発熱,倦怠感,頭痛などを伴う.時にめまいや悪心,嘔吐などが出現することもある.同じ部位に繰り返し丹毒が発症する場合がある(習慣性丹毒).

【病因・発症機序】蜂窩織炎同様,軽微な外傷から侵入した細菌が真皮に感染し,発症するといわれている.習慣性丹毒の場合は,慢性扁桃炎や慢性副鼻腔炎,齲歯などの病巣感染との関連も指摘されている.


診断

【鑑別疾患で想起すべき疾患】顔面に急性から亜急性の経過で発症し,紅斑を伴う疾患が主な鑑別疾患である.接触皮膚炎はしばしば丹毒と類似した外観を呈し,搔破による軽微な傷が丹毒発症の契機となることもある.両者が合併すると,診断はより困難になる.鑑別のためには,まず詳細な問診を行い,接触皮膚炎の原因となるようなエピソードの有無を確認する.症状の大きな違いとして,瘙痒感が挙げられる.通常,丹毒は痒みがないか,あっても軽度であるが,丹毒と鑑別が問題になるほどの接触皮膚炎であれば激しい痒みを伴っていることが多いからである.また後述するような丹毒にみられる白血球数の増多やCRPの上昇などの血液検査所見は,接触皮膚炎では通常みられない.水疱性丹毒の場合は,帯状疱疹も鑑別すべき疾患の1つとして挙げられる.特に水疱形成の少ない初期の帯状疱疹と,ごく小さな水疱や痂皮を形成する丹毒の鑑別は難しいことがある.水疱に着目すると,帯状疱疹の水疱は中心臍窩を伴うが,丹毒の水疱にはそれがない

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