診療支援
治療

Aeromonas壊死性軟部組織感染症
Aeromonas necrotizing soft tissue infection
伊藤 周作
(日立総合病院主任医長)

病態

Aeromonas(以下A.) spp.は河川や湖沼,その周囲の土壌や魚介類などに広く分布する通性嫌気性のグラム陰性桿菌である.このうちA.hydrophilaおよびA.veronii biovar sobria(以下A.sobria)は食中毒原因菌に指定され,腸管感染のほかに経口感染または創傷からの経皮感染により壊死性軟部組織感染症の原因菌になる.

【病因】本邦では50~60歳の男性に多く,8割以上の症例に易感染性の基礎疾患があり,その3割を肝疾患が占めている.4割が経口感染とされ,肝疾患をもつ患者が生魚を食べたあとに発症する例が多い.

【臨床症状】四肢,特に下肢に多く,強い疼痛を伴って暗紫色に腫脹し,進行するとその上に水疱や血疱を生じ局所の熱感も乏しくなる(図27-14,図27-15).発熱を伴い,来院時すでに敗血症性ショックを呈したり意識混濁していることも多い.採血所見では白血球数は減少していることが多く,CRPやプロカルシトニン,CKは高値,DIC傾向により血小板数の低下やPT,APTTの延長,FDPやD-dimerの上昇,腎機能障害によるCreの上昇などを伴う.

【特に注意すべき臨床症状】基礎疾患に肝疾患がある場合,CRP産生能の低下により臨床所見に比べてCRP上昇が軽度なことがあり注意が必要である.痛みや意識混濁で歩行困難なことが多く,局所所見も全身状態も時間の単位で悪化する.


診断

 臨床症状に加え,水疱・血疱内容液や切開部からの滲出液をグラム染色しグラム陰性桿菌を確認するが,最終診断は細菌培養検査の結果による.魚の腐った臭いや,下水の臭いなどと表現される滲出液の強い悪臭も参考になる(図27-16).X線写真やCTで,皮下組織の強い浮腫とともにガス像を認めることもあるが,ガス像がなくても本症を否定はできない.

【鑑別診断で想起すべき疾患】劇症型A群レンサ球菌感染

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