病態
皮膚結核は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による皮膚感染症である.わが国では結核患者数の減少に伴い減少傾向にあるが,疾患認識の低下により,誤診や診断が遅れる例が増加しているともいわれている.世界的には発展途上国を中心とした地域にいまだ多数の結核患者が存在し,HIV感染の増大により,さらなる増加が懸念されている.また,わが国は先進国中では結核患者数が多く,さらに近年わが国への流入が増加している外国人による輸入結核も問題となっている.高齢者での結核の再燃や,抗腫瘍薬・免疫抑制薬などの使用による発症危険性の増大も懸念されている.乾癬を中心として皮膚科領域でも使用が増えている生物学的製剤による結核の再活性化も留意しておくべきである.皮膚結核は病変部に菌を認める真性皮膚結核と,菌やその代謝産物へのアレルギー反応で病変には菌を認めない結核疹に大別される.
1.真性皮膚結核
①皮膚初感染徴候:結核に免疫のない人の皮膚に菌が接種された場合に生じ,結節や硬結を伴う潰瘍を呈する.②皮膚疣状結核:結核に免疫がある人の皮膚に菌が接種され,過角化を伴う疣状の病変を形成するものである.四肢末端・肘頭・膝蓋・臀部などに,硬い小結節が融合拡大しながら辺縁で疣状に隆起し,中心治癒傾向を示す.頑癬・クロモミコーシスなどの真菌感染症や尋常性疣贅などとの鑑別を要する.③皮膚腺病:リンパ節・骨・関節・筋肉・腱などの結核病巣から直接または冷膿瘍を介して皮膚に波及するものである.頸部リンパ節結核から生じることが最も多く,次いで腋窩に多い.皮下硬結に始まり,瘻孔から排膿が認められるようになり,開口部を中心に肉芽腫を形成する.④冷膿瘍:皮下に結核菌による膿瘍を形成したもので,皮表は淡紅色~暗紅色を呈するが,一般細菌の膿瘍と異なり熱感に乏しいため,「冷」膿瘍とよばれる.⑤尋常性狼瘡:結核に免疫
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