病態
Pasteurella multocidaはヒトを除く哺乳動物の口腔内に常在する嫌気性グラム陰性短桿菌で,人畜共通感染症の病原菌として知られている.Pasteurella multocidaは口腔内にイヌで15~75%,ネコで60~ほぼ100%と高率に存在している.
診断
【問診で聞くべきこと】動物咬傷や搔傷がなかったか問診する.
【臨床症状からの診断】イヌやネコなどの動物の咬傷,搔傷後数時間~2日以内に発赤腫脹が出現し,さらに症状が悪化すると排膿がある(図27-25)図.免疫能が低下している患者や基礎疾患のある患者は,敗血症や髄膜炎など重症化することがある.呼吸器感染症や尿路感染症を呈することもある.
【必要な検査とその所見】細菌培養でPasteurella multocidaを検出する.発赤腫脹が強いときは血液検査や,ガス像の有無の確認や膿の貯留の可能性を考え,単純X線やCTやMRIなどの画像検査の施行を考える.
治療
Pasteurella multocidaはペニシリン系やセフェム系に良好な感受性を示し,ペニシリン系が第1選択薬に挙げられる.テトラサイクリン系やマクロライド系やアミノグリコシド系はPasteurella multocidaに対する抗菌力が劣る.
局所に膿瘍を形成しているときは切開排膿しデブリードマンし洗浄するが,Pasteurella multocidaは嫌気性菌のためすぐには縫合しない.
Px処方例 軽症の場合は1),2)を併用する.重症の場合は3),4)を併用する.
(軽症の場合)
1)サワシリン薬カプセル(250mg) 1回1カプセル 1日3~4回
2)ゲンタシン薬軟膏 1日2回 塗布
(重症の場合)
3)ビクシリン薬注 1日1~4gを1~2回に分けて点滴静注
4)ゲンタシン薬軟膏 1日2回 塗布
□患者説明のポイント Pasteurella multoci
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