病態
白癬菌の被髪頭部への感染で生じる.「日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019」では化膿性炎症の強いCelsus禿瘡(あるいは頭部の炎症性白癬)(図28-1図,図28-2図,Microsporum canisによる)とそれ以外の頭部(表在性白癬)に分類する.国際的には原因菌で区別する考え方が主流である.好獣性菌や,好ヒト性菌ではTrichophyton tonsuransによる症例に注意が必要である.
【病因・発症機序】本邦では,T. rubrum(ヒト好性菌:その他の部位からの感染),T. tonsurans(格闘技),M. canis(好獣性菌:ネコをはじめとしたペット),T. mentagrophytes(好獣性菌:ハリネズミ,げっ歯類),最近ではこの2菌種の好獣性菌の混合感染の報告もある.さらにNannizzia gypsea(好土壌性菌)などがある.
診断
【臨床症状】脱毛斑と,容易に抜ける頭髪.
【鑑別診断で想起すべき疾患】脱毛を呈する疾患などが挙がる.円形脱毛症,転移性皮膚癌,悪性リンパ腫,毛囊炎,トリコチロマニア,脂漏性皮膚炎.以下の検査を行う.Wood灯検査で蛍光を発する部位を確認.毛髪および頭皮の直接鏡検が基本.真菌培養には病毛,落屑を採取する.T. tonsuransでは症状に乏しい症例もあり,鏡検での検出が難しくブラシ培養を行う.Celsus禿瘡では生検により毛髪内への真菌の寄生形態を観察し,皮膚組織の培養で原因菌を確定する.
【KOH直接鏡検による白癬菌の診断】
1.問診で聞くべきこと
①ペット,特に炎症が強いときには,ネコ,イヌ,げっ歯類,最近では四つ指ハリネズミ,デグーなどの飼育歴.格闘技歴,家族の感染歴,ステロイドを外用していないか.②どこから始まったのかも重要である.頭皮からか,体には病変がないか.
2.鏡検時の注意点
毛内性寄生などの判断のた
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