病態
顔面や四肢の体部白癬部位にステロイド外用薬を不適切に外用することで,もとの体部白癬とは全く異なる臨床像を呈する.
【発症機序】ステロイド薬は抗炎症作用と皮膚のターンオーバーの抑制という局所作用をもつため,体部白癬部位にステロイド外用薬を不適切に外用し続けると痒みがなくなる一方でターンオーバーできなくなった皮膚の角層内に白癬菌が増え続け,さらには毛包内にも侵入することで多彩な臨床像を呈する.
【臨床症状】①顔面にみられる症例が多いが四肢や体幹にみられることもある.ステロイド外用薬の作用で顔面全体に潮紅・浮腫性紅斑を呈する(図28-10)図と,エリテマトーデスと誤診されることもある.②白癬菌が毛包内に侵入し毛包炎を呈す例(図28-11)図や顔面の髭毛部に生じた場合は,白癬性毛瘡(図28-12)図といわれるものとなる.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】非典型の発疹のためエリテマトーデスなどの膠原病のほか,白癬性毛瘡では細菌感染により生じる尋常性毛瘡,カンジダ感染により生じるカンジダ性毛瘡などが鑑別に挙がる.
【問診で聞くべきこと】現在認めている発疹の出現前にどのような外用薬を使用したか,詳しく尋ねるのが肝要である.もしステロイド外用薬を使用した場合は,その種類と外用期間をしっかり聞かなければならない.
【臨床症状からの診断】①発疹部位に紅色丘疹や小膿疱,発疹の辺縁に落屑を認めることが多い.②白癬性毛瘡では髭毛部の一部の落屑や毛包に一致した膿疱が多発し圧迫すると排膿があること,髭毛が抜けやすくなることが特徴である.
【必要な検査とその所見】ステロイド外用薬使用の病歴から異型白癬,白癬性毛瘡を疑い,KOH鏡検をすることが肝要である.ステロイド外用薬のターンオーバー抑制作用により角層内には多数の白癬菌が存在するため,KOH鏡検で容易に診断できる.図28-10図のような症例では皮疹の辺縁部位の
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