病態
先天性・遺伝性の免疫不全を背景に幼児・小児期から皮膚・爪・口腔粘膜に浅在性のカンジダ感染症を繰り返す症候群である.遺伝性には常染色体劣性遺伝形式,常染色体顕性(優性)遺伝形式があり,しばしば自己免疫疾患(主に内分泌疾患)を合併する.抗真菌薬の長期服用が必要なことも多いが,生命予後は良好である.
【病因・発症機序】①慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCC)は主に遺伝性のT細胞機能不全によって生じ,近年さまざまな遺伝子異常(病型)が明らかになっている.内分泌異常を伴う病型の代表としては,自己免疫調節因子であるAIRE変異による多腺性自己免疫症候群1型〔APS1:常染色体潜性(劣性)遺伝〕があり,CMCC,副甲状腺機能低下症,副腎不全(Addison病)を3徴とする.②APS1は萎縮性胃炎,悪性貧血,セリアック病,自己免疫性肝炎,外胚葉形成不全症など内分泌臓器以外の自己免疫疾患を合併することもあり,臨床像は多彩である.③常染色体顕性(優性)遺伝形式としては機能獲得型のSTAT1変異が知られており,甲状腺機能低下症や頭蓋内動脈瘤などを合併する.機能獲得型STAT1変異によってIFN-γ,IL-17,IL-22の産生が低下し,Th1とTh17反応が減弱することでカンジダ感染症を繰り返す.④内分泌異常を伴わない病型としては,IL-17シグナル伝達異常症(IL-17RA,IL-17RC,IL-17F,ACT1の異常)があり,カンジダ感染症以外にも黄色ブドウ球菌や抗酸菌感染症を合併することがある.⑤ほかにもさまざまな遺伝子異常が明らかになっているが,原因が特定できないケースもある.
【臨床症状】①幼児・小児期から口腔カンジダ症(鵞口瘡)(図28-15)図,口角びらん症,カンジダ性おむつ皮膚炎,指趾に爪甲下角質増殖を伴う爪カンジダ症(図28-16)図を認める.②皮膚病変としては境界明瞭な落屑性紅
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