病態
黒色真菌症は暗色調の真菌群(黒色真菌)による皮膚,皮下組織の感染症である.生体内の真菌の寄生形態の違いにより,黒色分芽菌症(chromoblastomycosis)と黒色菌糸症(phaeohyphomycosis)に分けられる.かつて用いられたクロモミコーシスという疾患名は黒色真菌症全体を示すのか,黒色分芽菌症を指すのか時に曖昧であったため,直近のガイドラインでは使用されていない.組織内菌要素が胞子状で壁が厚い厚壁細胞,または縦横に隔壁を認める石垣状細胞があれば黒色分芽菌症とし,菌糸状,胞子連鎖のみであれば黒色菌糸症とする.原因菌として複数の属にわたる100種を超える菌種が知られている.
従来は黒色分芽菌症の症例数が多かったが,近年黒色菌糸症の割合が増加している.黒色分芽菌症は主にFonsecaea pedrosoi(F. monophora)によって健常者に生じ,顔面,下肢,臀部に好発する.黒色菌糸症は免疫抑制状態に伴って生じることが多く,原因菌はExophiala jeanselmeiやその近縁菌によることが多い.好発部位は上肢で,しばしば外傷に続発する.
診断
【問診で聞くべきこと】経過や外傷の既往,自覚症状,基礎疾患があれば治療歴,治療薬を問い,免疫抑制状態にあるか否かを判断する.
【臨床症状からの診断】①黒色分芽菌症:限局性の紅斑で始まり,年余にわたり徐々に拡大し,手掌大を超える不整形の大きな浸潤局面,あるいは疣状の紫紅色の増殖性病変となる.自覚症状は軽微である.②黒色菌糸症:亜急性に膿瘍,囊腫が生じ,自壊・排膿することがある(図28-23)図.多くは限局性,単発性である.時に転移性病巣あるいは自家接種による多発性病巣を生じる.炎症所見,自覚症状は細菌によるものより軽微である.
【必要な検査とその所見】①KOH直接鏡検法(図28-24)図:病巣表面に付着する鱗屑,痂
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