診療支援
治療

皮膚リーシュマニア症
Cutaneous leishmaniasis
山口 さやか
(琉球大学講師)

病態

 リーシュマニア症は,Leishmania原虫によって生じるベクター媒介性感染症である.ヒト,イヌ,げっ歯類などに感染する人獣共通感染症で,メスのサシチョウバエが媒介する.アフリカ,地中海沿岸,中近東,中央アジア,南北アメリカ大陸など,98か国以上に分布する.日本にはサシチョウバエが生息しておらず,海外の流行地域で感染し発症するか,流行地から来日した外国人に発症する.

 リーシュマニア症は,皮膚型,粘膜皮膚型,内臓型の3つに分けられる.ヒトに病原性を示すLeishmania原虫は23種類が知られ,原虫種により発症する病型や流行地域が異なる.

 皮膚型リーシュマニア症は現在でも世界で年間70万~100万人程度に発症し,大部分はアフガニスタン,パキスタン,シリア,サウジアラビア,アルジェリア,イラン,ブラジル,ペルーからの報告である.皮膚型の原虫種は,Leishmania tropicaL. majorによるものが多い.粘膜皮膚型はボリビア,ブラジル,エチオピア,ペルーに多く,L. braziliensisL. panamensisなどによる.年間20万人ほどが発症する内臓型は,ブラジル,エチオピア,インド,ケニア,ソマリア,南スーダン,スーダンでの発症が多く,L. donovaniL. infantumが主な原虫種である.

 日本では南米や中東で感染した皮膚型や粘膜皮膚型リーシュマニア症の発症が多く,内臓型はまれである.

【臨床症状】皮膚型リーシュマニア症は,サシチョウバエに刺された部分に丘疹が生じ,数か月から数年かけて結節や肉芽腫性病変となり無痛性の潰瘍が生じる(図28-34).潰瘍は多発し潰瘍堤が隆起することがある.粘膜皮膚型は,鼻や口腔粘膜の潰瘍から鼻中隔や鼻翼の欠損を生じ(図28-35),整容的醜形とともに嚥下障害も生じる.皮膚型や粘膜皮膚型の生命予後はよ

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