病態
疥癬は,ヒゼンダニが皮膚角質層に寄生して生じる感染性皮膚疾患である.
【頻度】わが国では年間に10万~20万人くらい新規患者があると推測されている.高齢者施設や病院で,疥癬の集団発生をきたすことがある.その時職員や家族にもうつる.
【病因・発症機序】病因は,ヒトヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)である.ヒゼンダニは,体長約0.4mmで,ヒトの皮膚の角質層の中に巣穴を掘り,生息する.約1か月の潜伏期を経て,感作により全身に痒みが起きる.
【臨床症状】全身の激しい痒みと,体幹,四肢に散在性の丘疹,搔破痕が生じる.痒みは激しく,夜,寝つきが悪く,痒みで目が覚めることもある.手指,手指間,手掌,手首,足に疥癬トンネルが生じる.男性の場合,陰茎部や陰囊部に結節が生じる.
【特に注意すべき臨床症状】特に注意がいるのは,角化型疥癬(ノルウェー疥癬)である.感染力がきわめて強く,容易に集団発生をきたす.臨床症状として,垢がこびりついているようにみえるとき,尋常性乾癬のような分厚い鱗屑があるとき,顕微鏡検査で虫体の有無を確認する.
診断
【問診で聞くべきこと】①家族内や親しい人に,同様の症状や痒みがないかどうかを問診する.患者が乳幼児の場合には,両親にも症状がないかどうか,学生の場合には友人に症状がないか,同居する祖父母に湿疹病変が出ていないかを聞く.②成人であれば,仕事で病院や高齢者施設で勤務をしていないかを尋ねる.
【臨床症状からの診断】①臨床症状として,体幹・四肢に,ばらまいたような湿疹病変があるときに疥癬を疑う.手足を精査し,疥癬トンネルがないかどうかをみる.疥癬トンネルは,長さ5mm前後の,ひっかいたような白色の線状皮疹である.男性の場合,陰部に結節を探す.陰部に結節があれば,表面に疥癬トンネルを探す.疥癬トンネルがあれば,その先端にすむヒゼンダニを確認する.②角化型疥癬の場
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