ダニによる皮膚疾患として,ヒゼンダニ(疥癬,動物疥癬),イエダニ,マダニなどがある.ヒゼンダニによる疥癬,動物疥癬については,別項目(→,「疥癬」の項,→,「動物疥癬」の項)を参照いただきたい.ここでは,吸血性のダニとして,イエダニ,マダニについて述べる.
Ⅰ イエダニ
病態
イエダニは,吸血性のダニがヒトの皮膚を刺す疾患である.吸血部位に紅色丘疹が生じる.
【頻度】①ネズミの減少に伴い,イエダニ刺症は減っている.ネズミが生息している一戸建ての古い家屋での被害がある.②季節は6~9月に多い.
【病因・発症機序】イエダニは体長は約0.7mmで褐色をしている.主にドブネズミに寄生し,ネズミの巣にすんでいる.室内に移動してヒトも吸血する.
【臨床症状】①イエダニは,衣服に覆われた皮膚の柔らかい部分を刺すことが多い.好発部位は,下腹部,脇の下,大腿内側である.②痒みを伴う紅斑や紅色丘疹が生じる.
診断
【問診で聞くべきこと】家にネズミがいるかどうかを確認する.
【臨床症状からの診断】①下腹部,大腿といった皮疹の分布から,イエダニ刺症を推測する.②ネズミがいることが確認できれば,イエダニ刺症の可能性が高くなる.
治療
皮疹部位にステロイド(マイザー)外用を行う.痒みには,抗ヒスタミン薬(アレグラ)の内服を行う.
Px処方例 下記のいずれか,または両方を用いる.
1)アレグラ薬錠(60mg) 1回1錠 1日2回
2)マイザー薬軟膏 1日2回 塗布
【予後と経過】イエダニが駆除できれば,予後は良好である.
□患者説明のポイント イエダニ駆除にはネズミ駆除が必要となる.イエダニを駆除しないと,また被害を受ける.燻煙式殺虫剤は,ダニ駆除には効果が乏しいことがある.イエダニの生息場所はネズミの巣であるからである.
□生活指導のポイント ダニの原因となるネズミを駆除しないと,被害は持続する.症状が治まらないとき,ネズミの巣
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