診療支援
治療

毒蛇咬症
Venomous snake bite
高橋 健造
(琉球大学教授)

Ⅰ マムシ咬症

病態

 マムシ咬症は5~9月に多く年間1,000~3,000件の発症があり,毎年10人ほどが死亡する.マムシ毒は出血毒であり,筋壊死などの症状は受傷局所にとどまる.蛋白分解酵素や溶血作用のあるホスホリパーゼA2,ブラジキニン遊離酵素などが含まれる.

【臨床症状】マムシ咬症では,数分後に受傷部位に激しい疼痛,発赤,腫脹,出血などが生じる.全身症状として,血小板凝集による血小板減少,横紋筋融解による高ミオグロビン血症,外眼筋麻痺,動眼神経麻痺による複視,マムシ毒による直接的な腎毒性による急性腎不全などが起こりうる.特に急性腎不全はマムシ咬症における主な死因である.


治療

 ヘビに咬まれて激痛を伴う浮腫性腫脹がある場合は,地域によりマムシやハブの咬傷と考えて,大至急,抗毒素血清のある医療機関での治療を行う.

 2つの牙の痕や,抗止血作用のあるヘビの唾液の注入により持続する出血の確認は参考になる.全身療法としてマムシ抗毒素血清やセファランチンの投与などがある.2次感染の予防として,破傷風トキソイド,抗菌薬を使用する.局所の治療は,切開・緊縛・吸引などがあるが,エビデンスには乏しい.コンパートメント症候群を生じることがあり,筋区画内圧をモニターしたうえで,必要な際は減張切開を行う.


Ⅱ ハブ咬症

病態

 ハブ,ヒメハブ,サキシマハブ,タイワンハブの4種類のハブ属が生息する沖縄県や奄美諸島でのヘビ咬症ではハブ咬症を考え,牙痕,電撃痛,局所腫脹から診断する.ヘビ自体を確認できれば診断は容易である.ハブはマムシ亜科ハブ属に含まれる有毒種であり,ハブ毒はマムシ毒よりは毒性自体は弱いが,一度に注入される唾液量が多いため重症化しやすい.

 ハブの活動が活発になる春先と秋に多く生じ,発生場所は人間の生活圏が多く,生活通路や庭先,室内などの報告が多い.沖縄県におけるハブ咬症の発生数は年々減少しており,2

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