Ⅰ マムシ咬症
病態
マムシ咬症は5~9月に多く年間1,000~3,000件の発症があり,毎年10人ほどが死亡する.マムシ毒は出血毒であり,筋壊死などの症状は受傷局所にとどまる.蛋白分解酵素や溶血作用のあるホスホリパーゼA2,ブラジキニン遊離酵素などが含まれる.
【臨床症状】マムシ咬症では,数分後に受傷部位に激しい疼痛,発赤,腫脹,出血などが生じる.全身症状として,血小板凝集による血小板減少,横紋筋融解による高ミオグロビン血症,外眼筋麻痺,動眼神経麻痺による複視,マムシ毒による直接的な腎毒性による急性腎不全などが起こりうる.特に急性腎不全はマムシ咬症における主な死因である.
治療
ヘビに咬まれて激痛を伴う浮腫性腫脹がある場合は,地域によりマムシやハブの咬傷と考えて,大至急,抗毒素血清のある医療機関での治療を行う.
2つの牙の痕や,抗止血作用のあるヘビの唾液の注入により持続する出血の確認は参考にな