診療支援
治療

異汗症(異汗性湿疹),汗疱
Dyshidrosis,Pompholyx
室田 浩之
(長崎大学教授)

病態

 異汗症は汗疱・異汗性湿疹に代表される主に掌蹠にみられる再発性の小水疱で,炎症を合併し瘙痒を伴うことがある.

【頻度】診療の際,遭遇する頻度は高い.

【病因・発症機序】異汗症(dyshidrosis)は手掌の汗停滞症に伴う小水疱を意味する.古代ギリシャ語の「泡」に由来する“pompholyx”が語源とされる汗疱,病理学的に表皮海綿状変化を伴う湿疹として異汗性湿疹を含み,手湿疹の派生的表現型との見方もある.本疾患の汗管との関連については諸説あり,いまだ結論は得られていない.本症の誘因として乾燥,皮膚炎,多汗,精神的ストレス,金属アレルギーなどがある.

【臨床症状】異汗症は掌蹠の小水疱と時に周囲の炎症を伴い,時間経過とともに膜様の落屑が水疱の中央から生じ遠心性に広がり融合する.出現・消褪を繰り返すことで角化と慢性皮膚炎を生じる.


診断

 特徴的な臨床症状,経過,出現時の状況から診断できる.

【鑑別診断で想起すべき疾患】白癬,疥癬,掌蹠膿疱症,自己免疫性水疱症,接触皮膚炎など.

【必要な検査とその所見】KOH鏡検により白癬や疥癬などを鑑別する.掌蹠膿疱症,自己免疫性水疱症の鑑別のため皮膚病理検査,血液中の自己抗体の有無を確認する.パッチテストによるアレルギー検査(金属,日用品,職場の被疑抗原など)を行う.


治療

 異汗症は角質による汗停滞を防ぐ目的で尿素やサリチル酸を含む外用薬を用いる.炎症はステロイド外用薬で治療する.治療に抵抗性を示す症例には紫外線治療が考慮される.

a.保湿外用薬

Px処方例 症状や塗り心地に合わせ,下記のいずれかを用いる.

1)ウレパールクリーム 1日数回 適宜塗布

2)サリチル酸ワセリン軟膏 1日2回 硬いところに塗布 サリチル酸5~10%,角化の強さに応じて濃度を上げる

b.炎症を伴う場合

Px処方例 皮膚炎に対し下記のいずれかを用いる.

1)アンテベート軟膏 1日1

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