診療支援
治療

腋臭症
Osmidrosis
室田 浩之
(長崎大学教授)

病態

 汗そのものは無臭であるが,皮脂,表皮由来の脂質,皮膚常在菌と混ざり合うことで独特の臭気を発生すると考えられている.主にアポクリン汗腺がかかわる.

【頻度】日本人の10~15%とされる.腋臭症と関連の深い湿性耳垢の頻度は約16%である.

【病因・発症機序】アポクリン汗腺中の脂肪酸が皮膚表面の細菌で分解される結果生じる.湿性耳垢と家族歴の関与が大きい.アンドロゲン作用を有するホルモン(5α-リダクターゼなど)のアポクリン腺活性によるとの報告もある.湿性耳垢形質の遺伝にかかわるABCC11遺伝子の一塩基多型が関与する症例もある.

【臨床症状】腋窩の悪臭.


診断

 腋臭を嗅ぐなどの方法がとられる.半定量的検査としてガーゼテスト法が用いられる.

【問診で聞くべきこと】家族歴は有用である.特に家族内の腋臭症や湿性耳垢の有無から推定する.

【必要な検査とその所見】ガーゼテストは被検者が腋窩にガーゼを挟み,数分後にガーゼのにおいを嗅ぐ.症状の強さを以下の5段階で評価する.Level 1:におわない,Level 2:ごくわずか,Level 3:鼻を近づけるとわかる,Level 4:鼻を近づけなくてもわかる,Level 5:手に持っただけでわかる.


治療

 制菌薬の外用を試みる.多汗を伴う例は多汗症に準じた治療を行う(,「多汗症」の項参照).重症例では針脱毛やレーザーによる脱毛療法,マイクロウェーブによるアポクリン汗腺の破壊,剪除法による外科的治療が考慮される.

a.制汗剤外用,抗コリン薬内服による対症療法

Px処方例 下記を単剤使用,あるいは併用する.

1)20%塩化アルミニウムローション 1日2~3回 塗布 [保外] 院内製剤

2)プロ・バンサイン錠(15mg) 1回1錠 1日3回 [保外]

 プロバンテリン(プロ・バンサイン)など抗コリン薬は緑内障や前立腺肥大を有する患者には投与すべきではない.また漫然と

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