診療支援
治療

痤瘡
Acne vulgaris
赤松 浩彦
(藤田医科大学教授・応用細胞再生医学)

病態

 尋常性痤瘡は脂腺性毛包を侵す慢性炎症性疾患で,痤瘡のなかで最も代表的な疾患であり,一般に痤瘡といえば“尋常性痤瘡”,すなわち“ニキビ”のことを指す(,「痤瘡様発疹」の項の表31-1参照).

 ニキビは,ほとんどの人が程度の差はあれ一生に一度は経験するものである.したがって,本症を身体の発育過程における生理現象の1つとしてとらえることも可能であるが,症状が強い場合には1つの皮膚疾患としてとらえるべきである.

【病因・発症機序】ニキビの発症機序は,大きく2つの段階に分けることができる.第1段階は面皰形成であり,第2段階は炎症惹起である.ニキビの多くは思春期に性ホルモン,特に男性ホルモンの分泌が亢進することによって発症する.男性ホルモンは皮脂腺の機能を亢進し,脂質の生合成を増大するとともに,毛包漏斗部では角栓形成,すなわち閉塞が起こる.そのため毛包管内に皮脂成分,毛包内の常在菌である痤瘡桿菌〔Propionibacterium(Cutibacterium)acnes〕などの細菌,角化物質などが停滞し,ニキビの第1段階である面皰が形成される.次に,形成された面皰から紅色丘疹,膿疱,硬結に至る炎症過程において,最も重要なのはC. acnesである.C. acnesは好脂性であるため,毛包管内に皮脂が貯留した面皰はC. acnesにとって格好の生息条件となり,C. acnesの菌数は増加する.増加したC. acnesは細胞外炎症誘発物質を産生し,その結果,毛包壁の炎症が惹起されると考えられている.毛包壁が破壊され,さらに炎症が進展し,この状態を放置しておくと炎症は瘢痕治癒する.以上より理解できるように,ニキビの発症機序として(1)皮脂分泌の亢進,(2)毛包漏斗部の角化亢進,(3)毛包内細菌の増殖,(4)炎症の惹起,が重要となる.

【臨床症状】ニキビは主として思春期に発症し

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