病態
自身の抜毛行動を止めることができず脱毛を生じる状態を指す.不安障害(不安神経症・強迫性障害)関連疾患に分類される.
【疫学】女性が男性の2~10倍多い.皮膚科を受診する小児脱毛の1割に及ぶ.青年期の有病率は0.0~3.9%,生涯罹患率は0.6%である.成人の平均罹病期間は21.9年である.
【臨床症状】脱毛の部位は問わない.頭髪が最も多く,眉毛,陰毛が続く.頭頂部から広がることが多い(図31-9)図.一方でさまざまなパターンをとる.毛や頭皮の違和感や感情の起伏が引き金となり,また無意識の抜毛行為も認める.
【合併症】既往群では健常群に比べて不安障害を有する率が3倍高い.抑うつ状態,感情障害,アルコール依存などさまざまな精神疾患の合併が多くみられる.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】頭部白癬や梅毒などの感染症を含めて脱毛をきたすほかの疾患を除外する(→,「円形脱毛症」の項参照).特に円形脱毛症の鑑別が重要である.典型例では限局性の不完全脱毛を生じ,円形脱毛症に比べて人工的な印象を受ける(図31-9)図.円形脱毛症に合併することもあり,臨床像のみによる鑑別は難しい.
【問診で聞くべきこと】小児例では保護者が患児の抜毛行為に気づいていることが多い.
【臨床症状からの診断】米国精神医学会診断基準(DSM-5,2013)では表31-2図を満たすものとしている.
【必要な検査とその所見】ダーモスコピーで,黒点(black dots)は円形脱毛症,抜毛癖のサインとなる.ホウキ状の縦裂毛(trichoptilosis)や火炎状毛(flame hairs)は抜毛癖に特徴的である(図31-9)図.円形脱毛症にみられる感嘆符毛はない.出血や毛孔周囲の発赤を認めることもある.
【病理組織検査】破壊された成長期毛包や歪んだ終毛,出血がサインとなる.リンパ球浸潤を真皮に認めるものの,円形脱毛症でみられる毛球部の
関連リンク
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