病態
脱毛症は,発症時期から後天性と先天性の群に大別される.脱毛のタイプには,円形脱毛症などの成長期脱毛と,分娩後脱毛症などの休止期脱毛がある.日常診療で高頻度に遭遇する脱毛症は円形脱毛症と男性型脱毛症だが,その他の脱毛症の患者も少なからず存在する.脱毛症の種類はきわめて多彩で,原因や病態も各疾患で異なる.また,円形脱毛症と男性型脱毛症以外の脱毛症に関する信頼できる疫学データはほとんど存在しない.
診断
【問診および理学的所見】①脱毛の生じた時期,薬剤内服歴,高熱の既往や全身倦怠感の有無,ペットの飼育の有無などについて詳しく問診をとる.②脱毛のパターン(びまん性,限局性,虫食い状など)について診察する.③脱毛部をダーモスコピーで観察し,毛孔の状態,頭皮の色調や残存している毛髪の性状などを観察する.④牽引試験(pull test)を実施し,抜去した毛髪の近位端を光学顕微鏡またはダーモスコピーで観察すると,成長期脱毛と休止期脱毛を鑑別できる.
【臨床症状からの診断】
1.瘢痕性脱毛症
本疾患は,その名の通り脱毛の後に病変部が瘢痕化することが特徴の脱毛症の総称であり,進行すると永久脱毛に陥る.これは,炎症や真皮深層に及ぶ外傷などの物理的要因によって,毛包上皮幹細胞が局在するバルジ(毛隆起部)が破壊されるためである.以下に,炎症による瘢痕性脱毛症の代表疾患を紹介する.①毛孔性扁平苔癬(LPP):LPP(lichen planopilaris)では,臨床的には脱毛部に紅斑を認め,進行すると脱毛部の中央が軽度陥凹することが多い.脱毛部辺縁の毛孔周囲に痂皮を伴うこともある.病理組織学的には,毛包周囲にリンパ球が浸潤して苔癬型組織反応が生じた結果として毛包が変性し,周囲の線維化をきたす.LPPでは通常の扁平苔癬を合併することがあるので,口腔内病変の有無などを確認するとよい.なお,閉経期を過ぎた中高
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