病態
爪(爪甲)の形の異常には先天性のものと後天性のものがあり,いずれも原因となる疾患は多岐にわたり形状もさまざまである.先天性の爪甲の形態異常には,限局性に末節骨の変形や欠損を伴って爪甲が変形する場合や,全身性疾患の症状の一部として爪甲にも形態変化がみられる場合がある.一方,後天性の爪甲変形は内因性および外因性の因子の影響を大きく受ける.例えば,爪母で炎症が起こると,爪甲を作るための正常な角化を遂げることができず不完全な爪甲が作られることになり,炎症の程度や範囲によって,爪甲表面の軽度の粗造化から著しく脆く崩れやすい異栄養状態まで,爪甲はさまざまな形状を呈する.また,爪母に問題がなければ爪甲は正常に作られるが,健常な形状を保ったまま伸長していくためには,近位爪郭や側爪郭,爪上皮,爪床といった爪甲周囲の構造物によるサポートが必要となる.さらに,足の骨や関節の異常,歩行時の荷重,靴の履き方などによって爪甲に慢性的な機械的外力が作用すると,爪甲にはさまざまなパターンの変形が生じる.
診断
1.先天性の爪の形態異常
限局性の形態異常の例として,先天性示指爪甲形成異常症では,示指の爪甲に出生時から部分欠損などの異常がみられ,X線検査で末節骨の遠位端が2分しているのが特徴である.また,爪甲の形態異常を伴う全身性疾患としては,爪膝蓋症候群や先天性爪甲硬厚症,肥厚性皮膚骨膜症などが挙げられ,それぞれ特徴的な臨床像から診断する.いずれにせよ,爪甲の形態異常を先天性に認める場合には,家族歴の聴取に加えて,皮膚や毛髪,歯,骨の異常の有無を確認する.
2.後天性の爪の形態異常
①匙状爪:爪甲の中央が凹形にくぼんだ状態となり,全体として匙(スプーン)状を呈する.鉄欠乏性貧血や甲状腺機能異常による爪甲の菲薄化や脆弱化が原因としてよく知られているが,日常的に指(趾)腹に繰り返し大きな荷重がかかる職業の人も匙状
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