病態
爪囲炎は,爪甲周囲の皮膚(爪郭)の感染症であり,経過や臨床像から急性と慢性の2つのタイプに分けられる.日常生活において,特に手の指先の皮膚は,さまざまな外的因子にさらされることから,外傷や接触皮膚炎などが生じやすく,皮膚のバリア機能の破綻を招くことで,局所での感染症が起こりやすい.急性爪囲炎は,細菌感染によって生じる化膿性炎症である.一方慢性爪囲炎の病態はやや複雑であり,主としてカンジダによる感染症としての側面のほかに,洗剤などの生活環境のなかで曝露される物質による接触皮膚炎が基本的な病態であるとする意見も多い.
診断
1.急性爪囲炎
爪郭に生じたささくれ(さかむけ)をむいたり,甘皮(爪上皮)をいじったり,あるいは爪を噛んだりするなどした数日後に,指先の強い痛みを伴って,爪郭が発赤腫脹して発症することが多い.膿瘍を形成した場合には,爪郭の皮膚の一部が白色調に透見し,しばしば波動を触れる.
2.慢性爪囲炎
主婦や水仕事の多い職業の人は,爪郭の皮膚が過剰な湿潤環境におかれて浸軟しやすいため,バリア機能の低下によって洗剤などによる刺激性あるいはアレルギー性接触皮膚炎を生じることが多い.特に近位爪郭では,痒みや痛みを伴って皮膚の発赤や腫脹がみられ,爪上皮の消失によって近位爪郭と爪甲との間に空隙が生じ,そこからカンジダがしばしば検出される.なお,爪囲炎が数か月にわたって継続すると,複数の横溝がみられるなど爪甲表面が凹凸不整となる.
治療
1.急性爪囲炎
原因菌は黄色ブドウ球菌や化膿性レンサ球菌であることが多く,それらをターゲットとした内服抗菌薬の投与を行う.膿瘍形成がみられる場合には,穿刺または切開排膿を行うことも考慮する.
Px処方例
ケフラール薬カプセル(250mg) 1回1カプセル 1日3回
2.慢性爪囲炎
爪郭の皮膚に湿疹・皮膚炎がみられることが多く,炎症を抑えるためにステロイドの外用
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