診療支援
治療

粘膜の扁平苔癬
Mucosal lichen planus
井川 健
(獨協医科大学主任教授)

病態

 扁平苔癬は,慢性に経過する角化異常を伴う炎症性皮膚疾患の1つである.もともと口腔粘膜部も好発部位であるが,本症例のように,口腔粘膜に病変が限局するものも多い(口腔扁平苔癬).口腔粘膜病変の特徴的な所見は,乳白色の細い線条である.乳白色線状は細かい網の目状ないしレース状の病変となることが多い.また,しばしば難治性の潰瘍を形成する(図32-3)


診断

 診断は特徴的な臨床所見と病理組織所見によりなされる.病理組織学的には,苔癬型反応がみられることが重要であり,それは表皮向性に浸潤するリンパ球による表皮基底層の障害が基本となる.表皮向性浸潤程度はさまざまであるが,典型的には表皮直下の帯状のリンパ球浸潤として認められる.表皮の変性は,液状変性,組織学的色素失調などとして観察される.コロイド小体(Civatte body)もしばしばみられる.表皮顆粒層は肥厚し,表皮全体の構造としては,時に「鋸歯状」にみえる.

【必要な検査】原因は不明のことが多いが,本疾患の発症に薬剤,金属アレルギー,C型肝炎ウイルスなどの関与が報告されており,それらを除外するための問診,あるいは検査が必要となる.自己免疫性水疱症や移植片対宿主反応,粘膜の腫瘍性変化などは臨床的に鑑別する必要があり,それぞれに対応する検査,組織学的検査を施行する必要がある.


治療

 まず,口腔内を清潔に保つことに留意する.そのうえで薬物治療を行う.ステロイド外用薬は最も普遍的に使用される.免疫抑制薬含有軟膏も保険適用外であるが,しばしば使用される.難治の場合,ステロイドや免疫抑制薬の全身投与も行われる.また,レチノイド〔エトレチナート(チガソン)〕の内服は保険適用でもあり,試みてよい治療法である.注意すべき点として,慢性に経過する場合に悪性腫瘍の発生がみられることがあるとされており,疑わしい場合には再生検も考慮するべきである.

Px

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