診療支援
治療

薬物による口腔粘膜障害
Mucous membrane damage by drug
水川 良子
(杏林大学臨床教授)

病態

 Stevens-Johnson症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)に代表されるアレルギー性によるものと,化学療法時に生じる治療関連毒性によるものとに大別される.SJS/TENなどの重症薬疹では,紅斑,水疱,びらんなどの皮膚症状のみでなく口腔粘膜,眼結膜,外陰部などの粘膜にも症状を認める.粘膜症状を伴う薬疹症例では皮疹が軽度であったとしても,SJS/TENへの移行を念頭におき重症型と捉えた対応が必要である.治療関連毒性としての粘膜障害は,口腔粘膜から消化管の粘膜では高い細胞代謝率を有するため発症しやすいといわれている.口腔のびらん,出血を生じるため,疼痛や摂食障害を生じ,補液などの全身管理が必要になることが多い.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】SJS/TENを早期に的確に診断することが重要である.固定薬疹(fixed drug eruption:FDE)や扁平苔癬(LP),一部の薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)でも口腔粘膜疹を認める.口腔カンジダ症を否定しておくのはもちろんのこと,口唇ヘルペス,麻疹,風疹,手足口病,水痘などのウイルス性発疹症や尋常性天疱瘡も鑑別に挙げられる.

【臨床症状からの診断】SJS/TENは発熱などの全身症状を伴い,口腔のみでなく眼結膜,陰部の粘膜症状をみる.口唇に血痂を付着し,口腔内の広範囲のびらん,疼痛を認める(図32-8).SJS/TENは粘膜症状のみでなく水疱・びらんなどの表皮壊死障害による皮膚剝離を認め,本邦では表皮剝離面積10%以上をTEN,10%未満をSJSと定義されている.FDEは同一部位に繰り返し皮疹を生じるため,以前の誘発による色素斑部に一致した紅斑が認められる(図32-9).口

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