診療支援
治療

口腔粘膜粘液囊腫
Mucous cyst of the oral mucosa
石塚 洋典
(大阪大学講師)

病態

 口腔粘液囊腫(mucous cystあるいはmucocele)は,皮膚科や口腔・頭頸部外科の臨床で頻繁に遭遇する疾患である.口腔底に生じた場合はガマ腫(ranula)ともよばれる.

【頻度】あらゆる年代に発症するが,20~30歳代の若年層に好発する.

【病因・発症機序】唾液腺は,主として漿液を分泌する大唾液腺(耳下腺や顎下腺など)と,導管開口部付近に存在し主として粘液を分泌する小唾液腺(口唇腺や頰腺など)とに分類される.好発部位は下口唇であり,口腔底や上口唇,舌にも生じうる.組織学的には上皮細胞による内腔の縁取りがない偽囊腫の像を呈する.発症因子として外傷と唾液腺管の閉塞が想定されている.病理組織学的には,組織球・線維芽細胞や小血管からなる肉芽組織が,貯留するムチンを取り囲むように存在する.唾液腺管の外傷による間質へのムチン漏出に続く組織反応の程度によって,ムチン貯留が透見されたり(図32-11),白色調の線維化を伴ったり(図32-12)といった異なる臨床像を呈する.


診断

【鑑別疾患で想起すべき疾患】アフタ性口内炎,脂肪腫,線維腫,血管腫,intravascular papillary endothelial hyperplasia,(水疱性)扁平苔癬,粘膜類天疱瘡,神経鞘腫,神経線維腫などが挙げられる.

【問診のポイント】外傷歴の有無,急な発症(~1か月程度)であるかを確認する.

【必要な検査とその所見】臨床所見のみで診断可能だが,穿刺により粘液貯留を確認してもよい.


治療

 単純切除が基本である.冷凍凝固療法,ステロイド局注,レーザー蒸散術(炭酸ガス,Er:YAG),micro-marsupilization(微小開窓法)なども有効である.

Px処方例

ケナコルト-A筋注用関節腔内用水懸注(40mg/1mL) 1回4mg/0.1mL 粘液を除去後,等量の生理食塩液などに

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