慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)あるいは透析療法中においては,種々の皮膚障害・疾患の合併が知られている.特に透析療法と関連する皮膚障害の場合は透析方法,透析膜の進歩などにより減少した皮膚障害・疾患もあるが,現在も治療に難渋するものが多い.
Ⅰ CKD関連皮膚瘙痒症
頻度が高い皮膚障害・疾患としてはCKD関連皮膚瘙痒症が挙げられる.特に透析患者に多いため透析関連皮膚瘙痒症と称されてきたが,むしろStage G3(eGFR 30~60mL/分/1.73m2)以降のCKDでみられることから,CKD関連皮膚瘙痒症と称するほうがわかりやすいとされる.
病態
視診上明らかな発疹を認めず瘙痒のみ認めるものを「皮膚瘙痒症」という.進行したCKDや透析療法中の患者では皮膚瘙痒症を生じる場合が多く,QOL低下につながっている.搔破により2次的に湿疹化,びらん,膿痂疹なども生じうる.
【頻度】50~90%と高い頻度で認められる.症状を認める患者の約15%は,睡眠障害をきたすような強い瘙痒を訴える.
【病因・発症機序】透析患者の90%以上で認められるとされる皮脂欠乏(ドライスキン)のほか,二次性副甲状腺機能亢進症,透析効率不良,透析方法,腎性貧血,血清Ca・P積値増加,β2-ミクログロブリン増加,高アルミニウム血症などの関与が考えられている.ドライスキンでは,通常表皮真皮境界部に位置する「末梢性」の痒みを知覚するC神経線維終末が表皮内角層直下まで侵入しており,軽微な外的刺激で瘙痒を生じうる.バリア機能が低下し,外的刺激に対する炎症も起こしやすい.また末梢性の痒みに対し,μ-オピオイド系(β-エンドルフィン/μ-受容体系)がκ-オピオイド系(ダイノルフィン/κ-オピオイド受容体系)より優位となることで生じる「中枢性」の痒みの存在が知られている.透析患者では血中のβ-エンド
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