神経症状を伴う皮膚疾患は多数あるので,今回は皮膚症状と中枢神経症状を示すものとして結節性硬化症(TSC)を,末梢神経症状を示すものとしてPOEMS症候群とペラグラについて述べる.
Ⅰ 結節性硬化症
病態
TSC1,TSC2遺伝子の異常の結果起こる常染色体優性遺伝の疾患で,程度の異なる多彩な症状がさまざまな時期に全身に出現し徐々に進行していく疾患.
【頻度】有病率:0.014%,推定患者数:15,000人.
【病因・発症機序】原因遺伝子TSC1,TSC2遺伝子の異常の結果,それがつくる蛋白質hamartinやtuberinに異常をきたし,下流のマンマリアン/メカニスティック ターゲットオブラパマイシンコンプレックス1(mTORC1)が恒常的に活性化するために,皮膚をはじめとする全身の過誤腫と同時に,てんかんや自閉症,認知障害などさまざまな精神神経症状,白斑などを生じる.
【臨床症状】中枢神経症状としててんかん,特に点頭てんかんやTAND(TSC-associated neuropsychiatric disorder)を認める.皮膚病変としては顔面の3つ以上の血管線維腫(AF)または前額の線維性局面,2つ以上の爪線維腫,多発性の小白斑,2つ以上の口腔内線維腫,5mm以上3個以上の葉状白斑,3個以上の歯のエナメル小窩.そのほか,腎臓などに2個以上の血管筋脂肪腫(AML),心臓の多発性横紋筋腫,肺のリンパ脈管筋腫症(LAM),多発性網膜過誤腫,多発性腎囊胞などがある.
診断
診断基準がある.
【鑑別診断】Birt-Hogg-Dube(BHD)症候群や多発性内分泌腫瘍1型(MEN1).
【検査と所見】胎児エコーで多発性の心横紋筋腫.脳MRIで皮質結節や放射状大脳白質神経細胞移動線,上衣下結節,上衣下巨細胞性細胞腫,脳波異常を認める.胸部CTで多発性囊胞(LAM)やMMPHを,腹部CTで多発性の
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