Ⅰ 滑液包炎
病態
滑液包は,滑膜で裏打ちされた線維性被膜をもつ囊胞で,互いに接する骨,筋,腱の間に存在して摩擦を軽減する役割を果たしている.少量の滑液を有する平滑な囊胞で,MRIでも指摘は困難である.関節周囲に多数存在し,個人差が大きく,全身では150以上あるといわれている.生理的に存在するもののほか,外的刺激やインプラントの刺激に反応して形成されることもある.外的刺激,感染や結晶沈着などにより炎症が生じると,滑液が貯留し囊胞として触れるようになる.なお,関節包と交通した炎症が乏しい慢性の滑液包炎と,関節包から関節液が限局性に進展した滑膜囊胞の区別は曖昧で,ほぼ同義で用いられることもある.
診断
肘頭部,膝前面や足関節前面を好発部位として,波動を触れる数~十数cmの皮下囊腫を生じて受診することが多い.数日の経過で発症し,熱感,疼痛が囊腫だけでなく周囲の軟部組織に及ぶ急性炎症を呈することもある
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