診療支援
治療

整形外科疾患と皮膚病変
Cutaneous manifestations of orthopedic disorder
古田 淳一
(筑波大学講師・医療情報マネジメント学)

Ⅰ 滑液包炎

病態

 滑液包は,滑膜で裏打ちされた線維性被膜をもつ囊胞で,互いに接する骨,筋,腱の間に存在して摩擦を軽減する役割を果たしている.少量の滑液を有する平滑な囊胞で,MRIでも指摘は困難である.関節周囲に多数存在し,個人差が大きく,全身では150以上あるといわれている.生理的に存在するもののほか,外的刺激やインプラントの刺激に反応して形成されることもある.外的刺激,感染や結晶沈着などにより炎症が生じると,滑液が貯留し囊胞として触れるようになる.なお,関節包と交通した炎症が乏しい慢性の滑液包炎と,関節包から関節液が限局性に進展した滑膜囊胞の区別は曖昧で,ほぼ同義で用いられることもある.


診断

 肘頭部,膝前面や足関節前面を好発部位として,波動を触れる数~十数cmの皮下囊腫を生じて受診することが多い.数日の経過で発症し,熱感,疼痛が囊腫だけでなく周囲の軟部組織に及ぶ急性炎症を呈することもある一方で,週単位の経過で徐々に増大し腫脹以外の自覚症状を訴えないこともある.穿刺により淡黄色漿液性の滑液を確認できるが,しばしば炎症により混濁あるいは血性を呈する.

 職業などで坐位が長時間に及ぶ,あるいは脊髄損傷など下半身麻痺で臀部に特に圧迫や摩擦が加わる者では,坐骨結節などに生じることもある.この場合は,皮膚が潰瘍化し皮下に弾性硬の腫瘤を伴う難治性褥瘡として取り扱われていることがある.

 特に初回穿刺時においては,細菌培養検査と関節液一般検査が,細菌感染や結晶沈着性炎症の検索に有用である.結晶の観察には偏光顕微鏡が有用であるものの,通常の光学顕微鏡でも細胞数の増加や結晶の存在は観察可能である.1強視野あたり数個以上の白血球が観察できれば炎症性と判断でき,長い針状結晶があれば尿酸塩として痛風,平行六面体・桿状の小さな結晶があればピロリン酸カルシウムとして偽痛風と判断できる.

 滑液囊胞は膝窩に生

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