診療支援
患者説明

肺がんの治療方針決定
髙橋由以
(虎の門病院呼吸器センター内科)

1.現在の病状・病態の説明

 肺がんとは,気管・気管支・肺胞の一部の細胞がなんらかの原因で異常に増えてがん化したものです.進行すると血液やリンパの流れに乗ってほかの臓器に広がり,これを「転移」といいます.肺がんの治療方針は,肺がんの種類を示す「組織型」と進行度を示す「病期(ステージ)」に応じて決定します.組織型は,まず小細胞肺がん・非小細胞肺がんの2つに分かれ,さらに非小細胞肺がんは大きく腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんに分類されます.病期は,がんの大きさ,リンパ節転移の有無,遠隔転移(肺と胸部リンパ節以外の他臓器への転移)の有無からⅠ期(IA1~3/B),Ⅱ期(ⅡA/B),Ⅲ期(ⅢA/B/C),Ⅳ期(ⅣA/B)に分類され,数字が大きいほど進行している状態を表しⅠ/Ⅱ期は早期がん,Ⅲ/Ⅳ期は進行がんです.遠隔転移があればⅣ期になります.小細胞肺がんでは上記に加えて限局型と進展型という分類を用います.限局型はがんが片肺と近くのリンパ節にとどまった状態,進展型は限局型を超えて広がった状態です.

2.治療目的

 主な治療法は外科療法(手術),放射線療法,化学療法(薬物治療)です.手術と放射線療法は病変に対する局所治療,化学療法は血液を介して全身に作用する全身治療です.局所治療は早期がんを対象とし根治を目的とします.Ⅳ 期肺がんでは局所治療の適応とならず全身治療を行いますが,根治は困難でがんの進行を抑えて今までどおり過ごせる時間をできる限り長く保つことを目的とします.心と身体の苦痛を和らげる目的で緩和ケアも行います.

3.治療法の概略と効果

1)非小細胞肺がん

(1)外科療法(手術)

 手術ではがん組織とその周囲の正常組織を切除します.全身麻酔下で行い開胸手術と胸腔鏡下手術があり,がんの位置や広がり,呼吸・循環機能や合併症などから術式と切除する範囲を決定します.Ⅰ・Ⅱ期とⅢ期の一部は手術を行いま

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