診療支援
患者説明

経食道心エコー検査
寺井和生
(西新橋クリニック・副院長)

1.現在の病状・病態

 心エコー検査は,通常,胸の表面から内部に向けて超音波を発射し(経胸壁心エコー検査),心雑音の原因精査や心臓の様子(心筋の動き,心内腔の様子,弁の動き,先天性心臓病の有無,心囊液貯留の有無,血流の状態など)や大動脈を含む血管の様子などを観察する検査です.診察や心電図,胸部X線では得ることのできない,動いている心臓の状態をリアルタイムに観察することができる有用な検査です.かつ,身体への負担が少ない検査であることから日常診療で繰り返し行われる検査の1つです.ただし,患者の体格次第では,超音波が心臓まで届かず,心臓を鮮明に映し出すことができないことがあります.

 そこで,心臓の背側にある食道から超音波を発射し,心臓を観察するために考案されたもの(心臓は食道と接しており,障害物がないため,良好な画像を得ることができます)が,経食道心エコー検査です.心臓の裏側から心臓内部の様子や大動脈などの大きな血管の様子を評価します.この検査は,臨床に導入されて30年以上経過した,確立した検査です.観察部位は,基本的に経胸壁心エコー検査と同じですが,胃内視鏡のような管を口から挿入し観察することから,経胸壁心エコー検査に比べ,患者にとってやや負担となる検査となり,特別な状況においてのみ使用される検査です.一方で,経胸壁心エコー検査に比べ,より鮮明な心臓や血管の情報を得ることができます.しかも病室を含む,あらゆる場所で実施可能な検査であり(手術中・直後の検査も可能),必要時は積極的に行ったほうがよい検査です.この検査が必要な病気は以下のとおりで,特に,左心房内血栓の有無,僧帽弁や大動脈弁の評価,胸部下行大動脈の観察に有用です1,2)

1)適応疾患3)

 心臓内血栓の有無の評価(左心房内血栓の有無,左心室壁在血栓の有無など),心機能の評価(心不全,心筋症など),弁疾患の評価(弁膜症,人工

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