診療支援
患者説明

胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)による治療
村島直哉
(三宿病院消化器科)

1.現在の病状と病態

 内視鏡検査にて,胃静脈瘤からの出血であることが確認されました.

 この写真(図1)は,胃の入口付近にできた静脈瘤の内視鏡写真で,累々と腫れた胃静脈瘤がわかると思います.そして,真ん中のこぶには白く変色した丸い点があります.この部分で胃静脈瘤が破裂したと思われます.幸い今は出血していません.

 胃静脈瘤は,もともと存在している胃の静脈が拡張したものです.その発生機序ですが,肝臓の中を走っている門脈の血流が病気によりうっ滞し,その結果,胃の静脈から左腎の静脈へと向かう本来ごく細い静脈が血流の逃げ道つまりバイパスになって拡張したと思われます.肝臓には門脈という血管があります.小腸・大腸・胃・脾臓から集まってきた血流がすべて1本の門脈という血管に集合し,肝臓の中に栄養を運んでいます.肝硬変の患者さんでは肝臓の中の門脈が細くなるため,いわば交通渋滞をきたしてしまうのです.そのため,門脈に入りきらなくなった血液は,門脈の初めの枝である左胃静脈という細い静脈に向かって集中して流れるようになり,胃の静脈瘤に発展してしまうのです.胃静脈瘤は,胃の裏側にある横隔膜の静脈にそそぐバイパスが形成され,さらに,左側の腎臓からやってくる腎静脈と合流し,最終的に下大静脈に流れ込むルートができ上がります.この経路については,造影CTで作成した3D画像にて表すことができます.

 実際の画像(図2)を見てみましょう.緑色に示したのが小腸・大腸・胃の静脈および門脈で,体の正面から見た画像になります.胃静脈瘤は,左胃静脈から順次胃内に静脈瘤を形成し,左腎静脈(青)にバイパスしていることがわかります.胃静脈瘤は大変太い血管なので,胃の内部に大きく張り出し,最終的に内視鏡写真のように破裂して出血してしまいます.食事をすると血流が増えますし,胃酸で粘膜が障害されますので,今は止血されていても必ず再出

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