1.現在の病状と病態
内視鏡検査にて,胃静脈瘤からの出血であることが確認されました.
この写真(図1図)は,胃の入口付近にできた静脈瘤の内視鏡写真で,累々と腫れた胃静脈瘤がわかると思います.そして,真ん中のこぶには白く変色した丸い点があります.この部分で胃静脈瘤が破裂したと思われます.幸い今は出血していません.
胃静脈瘤は,もともと存在している胃の静脈が拡張したものです.その発生機序ですが,肝臓の中を走っている門脈の血流が病気によりうっ滞し,その結果,胃の静脈から左腎の静脈へと向かう本来ごく細い静脈が血流の逃げ道つまりバイパスになって拡張したと思われます.肝臓には門脈という血管があります.小腸・大腸・胃・脾臓から集まってきた血流がすべて1本の門脈という血管に集合し,肝臓の中に栄養を運んでいます.肝硬変の患者さんでは肝臓の中の門脈が細くなるため,いわば交通渋滞をきたしてしまうのです.そのため