診療支援
患者説明

膵囊胞ドレナージ
良沢昭銘
(埼玉医科大学国際医療センター消化器内科・教授)

1.現在の病状・病態

 急性膵炎には壊死を伴わない間質性浮腫性膵炎と壊死性膵炎があります.このなかには発症後4週以内に軽快治癒するものもありますが,治癒せずに4週以降に膵囊胞を形成するものもあります.間質性浮腫性膵炎発症後4週以降に囊胞化したものが膵仮性囊胞で,壊死性膵炎発症後4週以降に囊胞化したものは被包化壊死(walled–off necrosis;WON)とよばれます1)(改訂アトランタ分類,表1).また,急性膵炎のほかにも慢性膵炎,膵外傷,膵外科手術後に膵周囲に液体貯留が生じ,膵囊胞が形成されることがあります.これらのうち,無症状のもの,無菌性のものは治療を要さず,自然消退するものもあります.一方,膵囊胞に感染を併発した場合,出血などの偶発症を発症した場合,強い腹痛などの症状がある場合には抗菌薬投与などによる治療の対象となります.

2.治療目的

 上記のように膵囊胞に感染を併発した場合,有症状の場合で,抗菌薬投与などの保存的治療が奏効しない場合に,膵囊胞ドレナージによる囊胞内容液の排出が必要となります.さらに膵囊胞ドレナージでも奏効しない場合には壊死物質除去術であるネクロセクトミーが行われます.

3.治療法の概略と効果

 膵囊胞ドレナージには,経皮的,内視鏡的(経消化管的,経乳頭的),経腹腔鏡的もしくは開腹手術があります2).近年では低侵襲で良好な成績が期待できる内視鏡的処置が第1選択となっており,病態に応じて経乳頭的ドレナージと超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ(endoscopic ultrasound–guided transluminal drainage;EUS–TD)のいずれかが選択されます.

1)経乳頭的ドレナージ

 慢性膵炎による膵囊胞の場合,主膵管狭窄や膵石による膵液流出障害をきたしていることが多く,尾側の膵管拡張を認める場合には内視鏡的逆行性膵胆管造影(en

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