診療支援
患者説明

甲状腺クリーゼ
赤水尚史
(神甲会隈病院・副院長)

1.現在の病状・病態の説明

 コントロール不良な甲状腺中毒症では,感染,手術ならびに種々のストレスを誘因として,発熱,循環不全,ショックならびに意識障害などをきたし,生命の危険(致死率10%以上)を伴う場合があります.このような生命を脅かすような甲状腺中毒状態は甲状腺クリーゼ(thyroid stormまたはthyroid crisis)とよばれます.

 多臓器における非代償性状態を特徴とし,発熱,循環不全,意識障害ならびに下痢・黄疸などを呈します.発症機序は不明です.甲状腺機能検査では,通常の甲状腺中毒症と区別できず,臨床的症状・徴候に基づいて診断されます.甲状腺ホルモンレベルが著明に高くない場合でも発症することがあります.原疾患はほとんどがバセドウ(Basedow)病〔グレーヴス(Graves)病〕です.特に未治療や治療中断のバセドウ病患者が甲状腺クリーゼ患者の多数を占めます.

 このような

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